映像の役者さんの感性に改めて感心
――共演の長妻さんの印象は?
「タイトなスケジュールでしたし、一緒にお芝居したのも、たぶん3シーンぐらいしかないんです。長妻くんも本当に多忙な様子で、この作品がクランクアップした翌日には、もう違う作品のクランクインみたいな状況で、あんまりどういう方か知らないまま、作品が終わってしまいました。
スタッフ、キャスト、誰にでも分け隔てなく話しかけていて、空き時間、待ち時間も控室に戻らず、ずっと現場にいて、真っすぐで気持ちいい方でした。喋りやすくて、気さくなイメージです。私は事前に調べるタイプなので、一緒にお仕事するにあたって、YouTubeの7ORDERの専門チャンネルなどを見て予習していたのですが、実際にお会いしてみたら、本当に天真爛漫で。ちょっと掴みどころのない、特別なセンスの持ち主なんだろうなという印象でした(笑)」
――ワタリ119さんが相棒役ですね。
「私には内緒で、監督からの指示で突然、ワタリさんがアドリブを入れてきた場面があるのですが、『そんな台詞、あったっけ?』と思いながらも動揺せずに芝居を続けていました。そのまま使われています。あとから、監督に『宮澤さんがどういう反応をするのか見たくて、ワタリさんにやってもらったんですけど、役のまま対応してくださって、すごいと思いました』って言われました。
本当に役を全うしていたのと、撮り直しとかになったらイヤじゃないですか(笑)。長妻くんとの場面でも急遽、監督から『この台詞のあと、アドリブで続けてもらっていいですか』と言われたのですが、彼はテイク1からすぐに対応していました。コメディだからこそ、アドリブを求められることも多くて。自分が映っていない場面でも『ここはきっと、アドリブだろうな』と想像して見ると、楽しいです」
――久しぶりの映像の現場で得た感触は?
「映像の仕事はコンスタントにできていないのが実情で、やっとできたと思ったら、次は1年後とか。一歩進んだと思ったのに、また出戻りみたいな感じでいたんです。なので映像の仕事となると、毎回、緊張と不安とプレッシャーで『大丈夫かな。台詞、覚えられるかな』とか、そういう気持ちがどうしても上回ってしまって、いつも楽しめないまま現場が終わってしまっていました。
今回は久しぶりに映像のお芝居って楽しいなって、思わせてくれた現場でした。まだ自分に楽しめる感覚があったんだという発見がすごくうれしかったです。ミュージカルや舞台は稽古期間がしっかりありますし、最初から最後まで通すので、感情面でも流れで喜怒哀楽の抑揚をちゃんとつけられます。映像作品はカットごとに、いきなり『スタート!』で撮影が始まるし、特に今回の作品に関しては順撮りではなく、クランクインした日にラストシーンを撮影しました。
『このシーンの前って、まだ撮ってないけど、どんな感情?』と想像したり、長期の作品になったら、声の音色ひとつにしても『昨日はどんな声でやっていたっけ?』と思い出しながら、芝居をしなくてはならない。舞台の経験を積んできたからこそ、映像で活躍されている役者さんの感性はすごいなと改めて感心しました」
――映像作品だったら、どんな作品に出たいですか。
「久しぶりにヤンキー気質、ちょいワル系をやりたいです。得意分野だと思うので(笑)。大人になればなるにつれて、プライベートでも仕事場でも、喋る口調とか、気にして生きなければなりません。ストレス発散がてら、巻き舌で喋るぐらいの、ドカンと暴れられるような役をやってみたい。コメディでも、シリアスでもいいですけど、ミュージカルではなかなかそういうお話はないので、ぜひ映像でやりたいです」
――映像より生の舞台のほうが落ち着くというのは、AKB48グループ時代の影響もあるのでしょうか。
「内容は違いますが、披露したものを目の前でお客様に見てもらって、拍手や歓声をいただいて成立するっていうことに関しては、やっぱりAKB48グループ時のライブと、今やっている生のミュージカルという舞台は一緒だと思います。お客様に見せるまでの段階、細かい作業をみんなで肩組んで、汗流して、涙流しながら必死になって作っていくっていう過程が同じなので、生の舞台をやっているときは“生きているな、自分”って、生きがいを感じます」
――コロナを経て、心境に変化はありましたか。
「どの現場も皆さん、常にマスクをした状態ですから、“この人はどういう表情をしているんだろう”となるし、やっぱり目だけではどうしても伝わりづらかったりします。舞台は生き物なので、演者よりも演出家さんのほうが、より大変だろうなと思いますね。ただ、その分、信頼は深まります。マスクに隔てられてはいるけど、“きっと同じ思いで、このシーンを作っているよね?”って会話ができない分、どこか心で通じ合えているなって思うことが昔より多い気がしています。
マスクは邪魔ではありますけど、悪いことばかりではないなって思います。“また、この方と共演できるんだ”“また一緒に仕事できるんだ”とスタッフさん、演者と再会できる場があるというのはすごくパワーになります。私自身、出会った人たちとまた違う場所で出会えるように仕事を続けたいというのがモチベーション。1作品1作品が希望につながりますから、当然、思い入れはこれまでとは変わってきています」