エゴサーチで左右されないメンタルになれた

――観客の感想をネットで見たりしますか。

「細かく、めちゃめちゃ見ます(笑)。怖いですけど……。お客様の感想で、自分の芝居が変わるとか、そういう影響があるわけではないですが、“こういう解釈をして見てくれているんだ”とか。なかには自分以上に深堀りしてくれている方もいらっしゃるので、それが逆にヒントになることもあったりします。

ダブルキャストの場合は“私じゃないほうは、同じシーンで相手とこんなことをしていたんだ”と参考になることもあります。もちろん、なかには厳しい言葉もあったりしますが、それは自分でもわかっていたり、『もっともだ』と思えるコメントも多かったりするので、傷つくけど、受け入れなきゃいけないとも思います」

▲お客様の感想に向き合い、自身の向上に努めている

――アイドル時代からエゴサーチはしていましたか。

「そうですね。どう見られているのか、すごく意識しているかもしれません。ここ数年で、やっとメンタルが強くなってきたかな。エゴサーチして、何か言われても、左右されない強さみたいなものはできてきたかもしれません。とはいえ、常に強いわけではないので、凹むときは凹みます。それが“クソ〜っ!”って思えるエネルギーに変わればいいんですけど、私はネガティブなので、けっこう食らっちゃうタイプなんです。

アイドル時代は元気が売りでステージに立たせてもらっていたこともあり、自分自身、常に元気じゃなきゃいけないと思い込んで、誰かに相談したり、弱いところを見せられないのが悩みでした。でも、大人になるにつれ、弱みを見せることも悪いことじゃないって学んでいきました。すごく悩んだり落ち込んだときには、それこそ同期の仲間に相談したり、会いに行って慰めてもらったり。今は舞台中なので、同じカンパニーの方たちに励ましてもらったりして、気持ちを鼓舞してもらっています」

――AKB 48のメンバーは卒業後、女優になる方も多いですね。

「刺激になります。“いいな、あの役者さんと共演して”“私もあの番組、出たいな”とか、ドラマや映画、バラエティ番組を見て思うこともあります」

――宮澤さん自身は、どんな女優でありたいですか。

「今はまだ、そういう像が見えていないのが実情です。夢や目標が漠然としすぎているんです。いただけたお仕事ひとつひとつに丁寧に向き合い、目の前のことを一歩一歩、全うしていくのが私のベストなのかなと思っています。そうやって続けていくうちに、いつしか夢や目標が具体的に見えてくるのだと思います。夢や目標を立てられるようになるのが今の自分の目標なのかもしれません」

▲今は目の前のことに一歩ずつ丁寧に全うしながら女優としてのステップアップを目指している

――今の癒しは?

「ワンちゃんを飼っているんです。ワンちゃんが我が家に来てからは、かなり自分のメンタルが支えられています。会話ができるわけでもないし、何を考えているかはわからないですけど、あったかいし、耳を当てると心臓の鼓動が聞こえる。愛おしいです。動物からしか伝わってこないエネルギーと癒される気持ち。私にはとても必要なものです。

愛犬のおかげで、ここ数年はすごく元気で生きていられます(笑)。ずっと飼いたいと思っていたんですけど、一緒に住んでいた兄がアレルギーだったこともあり、母も愛犬を亡くした経験から『犬を飼いたいなんて、思いつきで言ってはだめ』と言っていたので、我慢していたんです。でも母が『本当に大事にしなさいよ』って、アイドルを10年頑張ったご褒美にワンちゃんを迎えてくれて。今は本当に大切に育てています」

――劇中でも、犬の天然くんと仲良しでしたね。

「もっと、たくさん天然くんと出たかったです! 長妻くんみたいに、ウリウリ〜って顔をグリグリしたかったです(笑)。トレーナーさんが天才的な手腕でした。猫や犬と会話ができているんです。もちろん、実際にしゃべっているわけではないのですが、『寝転がる』っていう指示を出したら、その通りにちゃんと寝転がる。『そのまま』って言ったときはじっととしていて、『Go!』と言った瞬間に走り出したり。本当にお芝居をしていました」

――最後になりますが、2023年はどんな年にしたいですか。

「現在、『キングアーサー』をやらせていただいていますが、ありがたいことに今年はその後もすぐ次の作品、さらに次の作品と舞台が続きます。お仕事が続くのはとてもありがたいです。『キングアーサー』は2年前からいただいていたお話だったので、“2年後の仕事が決まっているって幸せなことだな”と、ずっと思い続けながら、ついに本番を迎えました。

先のお仕事が決まっているって、本当にありがたくて幸せなこと。今年はできる限り、いろんなチャレンジをしていきたい。好い加減で、しっかりやり遂げたいです。皆さんのイメージは、きっとAKBで止まっているんだろうなと思うことが多いので、思い出していただきがてら、ちょっとずつ新しい宮澤佐江も知ってもらいたいです。

AKB48のメンバーとして、毎日のようにテレビに出ていた時期がショートカットでボーイッシュだったので、そういう印象がどうしても強いのかもしれません。長めのヘアスタイルでテレビに出ると『宮澤佐江に似ている人かと思ったら、本人だった』とか『宮澤佐江、まだいたんだ。老けたな』とか(笑)。私自身、ショートもロングも嫌いではないですが、今のセミロングぐらいがアレンジもできるし、ちょうどいいのかなと思っています。

ただ、ボーイッシュなイメージは無くさないでおきたいです。私にとって『男前だよね』って言われることは褒め言葉で強み。最近では誇りに思うようになりました。ヤンキーみたいな役柄はもちろん、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』みたいな本当は女の子なんだけど、男の子に扮する役柄もやってみたいです」

――宮澤さんには確かにみんなを引っ張っていくような、かっこいいイメージがあります。

「本当ですか。ありがとうございます。本人は引っ張ってもらいたいんですけどね(笑)」

▲「男前だよね」と言われることは誉め言葉で強み!

最新作 映画『犬、回転して、逃げる』

■あらすじ
カフェ店員の木梨栄木(長妻怜央)は、実は「泥棒」という裏の顔を持つ青年だ。彼が今回のターゲットに定めたのは、婦人警官の眉村ゆずき(宮澤佐江)。彼女の部屋に忍び込み、現金の入った封筒の中にみつけた「ずっとお前を見ているからな」という手紙にドキっとするも、難なく“仕事”を終えた。一方、泥棒に入れられたことなど気づかず部屋でくつろぐ眉村。1日でも早く世界が終わることを願っているところに、爆弾魔の犯行予告が入ったと職場から電話が入る。ここのところ街中は、相次ぐ爆弾犯行予告に騒然となっていた。そんなある日、バイトを終え木梨が帰宅すると愛犬の天然くんが見当たらないことに気付き、盗まれた仕返しに眉村が天然くんを盗んだと思い込む……。

■出演
長妻怜央(7ORDER)、宮澤佐江、なだぎ武、中村歌昇、三戸杏琉、小坂涼太郎、ワタリ119、仁科亜季子、登坂淳一

脚本・監督/西垣匡基
主題歌/7ORDER『なんとかやってますわ』
制作協力・配給宣伝/アイエス・フィールド
企画・製作/TUFF STUFF
Ⓒ2023映画「犬、回転して、逃げる」製作委員会
2023年3月17日(金)シネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開

公式サイト:『犬、回転して、逃げる』
公式Twitter:@inukaiten_m
プロフィール
 
宮澤 佐江(みやざわ・さえ)
1990年8月13日生まれ。東京都出身。2006年AKB48第二期メンバーとしてデビュー。SNH48、SKE48を経て2016年グループを卒業。舞台出演は2014年の地球ゴージャス『クザリアーナの翼』を皮切りに、『王家の紋章』『ピーターパン』など人気作に抜擢され、今年は『キングアーサー』でヒロインのグィネヴィア役を務める。映画『犬、回転して、逃げる』は3月17日(金)より公開。Twitter:@oyasuminaSAE_mInstagram:@ sae_3830