「上司の指示に従ったのに…」はこうして起こる
身近な例ですと、上司に言われた通りやったつもりが、思ったような評価を得られなかった、という経験をお持ちの人もいらっしゃるのではないでしょうか。
私がコンサルタント時代に、顧客向けのプレゼンテーション資料を上司にチェックしてもらったことがありました。
「このグラフは見にくいな、色分けしようか」と上司に言われて、指示通りにして再提出したところ、「う~ん、なんか読みにくいんだよな」という渋い表情をされたことがありました。
私は“ちゃんと指示してくれよ”と思いましたが、今となっては上司の提示した「グラフが見にくいから色分けする」という問題を、何も考えずに受け入れていた自分の未熟さがわかります。
プレゼン資料は、自分よりはるかに高齢の顧客役員が初見で判断する資料です。「グラフが見にくい」というのはひとつの現象にすぎず、私の資料には「パッと見ただけで、役員レベルの顧客の印象に残るための配慮」がなかったのです。
上司も忙しい身ですし、上司自身もきちんと問題把握ができていないことも少なくありません。
ですから、常に目の前の問題に対して疑いの目を向けて「より本質的な問題は何か?」という思考をしていく必要があります。
前の例を、逆の立場で考えてみましょう。
もし、指示を受けた私が額面通りに問題を設定し作業していたとしたら、顧客や上司は満足できなかったでしょう。
“なんか違うんだよな”という、漠然とした不満を感じるかもしれません。必要な人材が採用できなかったり、ビジネスがうまくいかなかったりという、良くない結果になったでしょう。
一般的に、リーダーや顧客の問題設定は、そのまま受け止められてしまうことが多いのです。「やれと言われたからやっているけど、どうせうまくいかないよ」と思われながら、指示通りのものを納品しているという場面に出くわすことはよくあります。
指示を出すリーダーとして、発注する顧客として、問題設定力を高めておく必要があります。
また、指示を出す相手に対して「額面通りに指示を受け取るだけでなく、“最終的なゴールを意識して問題設定を変えるべきだ”という提案はいつでもしてほしい」という思いを共有しておくことも大切です。