ショートショートを読書の入り口にしてほしい

――いつ頃からショートショートを書いてるんでしょうか?

田丸 高校2年の頃に初めて書きました。小学生の頃は読書がすごく苦手だったんです。せっかちだったので飛ばし読みしちゃって、それで面白くないって。当たり前なんですけどね。それからショートショートと出会って、面白さに目覚めていきました。

その後、高校生になって暇を持て余したときに、なんとなくルーズリーフに書いたのが始まりです。なぜ書いたのかはよく覚えてないんですが、あとから考えてみると、祖父がモノづくりをしていたので、その影響で小さい頃から工作が大好きで。何かを作ることがずっと好きだったんですよ。なので、無意識で「お話を作る」ということが、そこと合致したんだと思います。

で、その作品をなんの気なしに友人に見せてみたんです。そしたら「面白い」って言ってくれて。ショートショートって自分で書いてもいいんだって気づいて、そこで初めて意識が変わりました。それからちょこちょこ書くようになって、大学に入ってから趣味として本格的に書くようになりました。

――その友人が読んでくれなかったり、反応がイマイチだったら、この作品もできていなかったかもしれませんね。

田丸 おっしゃる通りで、これって本当に偶然、たまたまじゃないですか。僕は恵まれてて、自分が大好きなものと出会えた。けど、出会わない人生もありえた。一般の方も恐らくそうじゃないかなと思うんです。もし出会わなかったとしたら、双方もったいないじゃないですか。なので「書き方講座」でショートショートに接点を持ってもらいたい、選択肢を持ってもらいたい。それが僕が「書き方講座」をやっている理由です。

▲ショートショートを読書の入り口にしてほしい

――なるほど。

田丸 もちろん、自分の本を出して、それを読んでもらうってことも1つの大切な手段なのですが、残念ながら昨今は本を積極的に手に取ることが少なくなってきてるじゃないですか。なので、それだけでは届きにくい層がいるのは間違いないんです。特に、読書が苦手な方にはショートショートが合うと考えてまして。そこに「読んでください」以外のアプローチをかけたい。

学校で書き方講座をやらせてもらうときに感じるんですが、かわいそうですけど生徒たちは強制的に受けさせられるわけじゃないですか。でも、全然興味ないような人が、書き方講座でちょっと書いてみたら“面白いかも”と思って、読み手になる、趣味で書くようになる、あるいはプロの書き手になる。というような広がり方があると思うんですね。なので、僕は書き方講座の活動も積極的にしていきたいです。

――子どもって思いもよらないことを言うじゃないですか。それって尊いと思うのですが、子どもの発想に衝撃を受けることってありますか?

田丸 そうですね。僕自身、子どもが好きというのもありますが、子どもの発想はまさに尊いなって感じます。正直、多くの発想は拙さがあります。当然、生活範囲が狭いので、同じような発想になってしまいがちです。ですが、描き方はそれぞれ違っていますし、そのなかにはギョッとするような素晴らしいアイデアがあります。そういったものに触れたときには面白いなと感じます。ただ、子どもだけではなく大人もそうで、なんなら大人の発想のほうがそう感じることが多いです。

――大人のほうがですか。

田丸 はい。大人ってそれぞれの経験が子どもよりもさらに違うし、深いじゃないですか。ショートショートを1~2作書いてもらうと、その方の経験してきたことがすごく出やすいんですね。そうなると、おのずとオリジナリティが出ますし、ありがちな類型的なアイデアを避ける意識が働くので、面白さだけで言うと、大人の作品のほうがむしろ面白いですよ。

――なるほど。生徒さんに「やってはいけないこと」を聞かれることってありますか?

田丸 ありますね。ありますけど、書き方講座においては全くないと答えてます。なぜなら、この講座は第一歩を踏み出すための入り口の会なので。「これはショートショートなのか?」って悩むのはあとからでいいと。僕も添削はしない主義なので、これは一貫してそうしています。

例えば、僕が褒めた生徒さんの作品を添削したら「褒めたのは嘘じゃん」って不信感が生まれると思うんです。僕がどんなに本気で褒めていたとしても。それは想像力にブレーキをかけることになってしまいますし、自信がなくなることにつながってしまって、僕の顔色を窺うようになってしまう。

それは良くないので、少なくとも僕の講座においてはそういうことは言いません。その代わりに感想として、良かったところ、好きなところはお伝えします。もちろん、プロとしてやっていくなら、添削って大切になると思うんですが、それを最初からやるのはどうなのかなって。

――ショートショートを書くのに向いている人や、書いてもらいたいと思う人っていますか?

田丸 そうですね、広く誰にでも書いてもらいたいというのは前提として、そのなかでも特にということですと、長く1つのことに取り組む人よりも、短いスパンでいろんなことをどんどんやっていく人、好奇心旺盛な人は向いてると思いますね。

あとは、忙しい人。ビジネスパーソンなんてスキマ時間でしか書けないじゃないですか。物理的に短い時間で書けるのがショートショートの良さだと思うので、時間がない方にこそオススメしたいですね。