糖質中毒になっている人には「ビーフジャーキー」

脂たっぷりのおいしい霜降り肉を食べていると、すぐおなかいっぱいだと感じることがありますよね。胃もたれのような、あの肉独特の満腹感に、ミートファーストの食欲抑制効果の秘密が隠されています。

通常、食べ物が胃に入ってくると、胃は活発に動きながら食べ物の量に応じてどんどんふくらんでいきます。しかし、肉を始めに食べると、肉に含まれる脂質により、早い段階で消化管ホルモンのインクレチンが分泌され、すぐに胃のぜんどう運動や伸縮は抑制されていきます。

こうして、まだ食事が始まったばかりにもかかわらず、インクレチンの作用によって、胃はまるで食後のような“休息状態”になって食欲を感じなくなるのです。

さらに、インクレチンは食欲をコントロールしている脳の満腹中枢にも直接働きかけてくれるため、肉を始めに食べるとすぐに「おなかいっぱい!」と感じることになるのです。

なかでも、肉の脂質によるインクレチンの分泌反応は非常に速く、脂が多い霜降り肉を食べるとすぐに満腹感が生じるのはこのため。加えて、インクレチンだけでなく脂質自体にも脳の空腹中枢を遮断して食欲抑制を促す効果があることがわかっています。

また、肉特有の食べごたえも満腹感に関係しています。肉を食べる際に、よく噛むことが感覚的な満足感をもたらすだけでなく、脳の満腹中枢に刺激を与えてくれるためです。

肥満の人は、脳が糖質中毒になっていて食欲が抑えられず、負のループに陥っている場合が多くあります。そうした場合にも、ミートファーストの食欲抑制効果や咀嚼による脳への伝達が大きな効果を発揮し、糖質中毒も抑えられるようになるのです。

すでに糖質中毒に陥っていて、ついお菓子を食べたくなるという人は、「ビーフジャーキー」を噛んでみてください。カレーライスやうどんなど、炭水化物がメインのメニューが避けられないときでも、ビーフジャーキーを15分前に食べておく「ビーフジャーキーファースト」で食欲を抑えることができます。

肉の満腹感で食欲が抑えられて自然と少食に

「肉」が食材としてダイエットに適している理由――それは腹持ちがよいから。

▲肉の満腹感で食欲が抑えられて自然と少食に イメージ:プラナ / PIXTA

これは、肉に含まれるタンパク質や脂質の消化吸収に時間がかかるうえに、肉の脂質によってすばやく分泌される消化管ホルモンのインクレチンが、胃酸の分泌を抑え、胃の活動をゆるやかにして、消化速度をさらに遅くするため。

こうした理由から、肉はほかの食材に比べて胃からの排出が遅く、胃に滞在する時間も長くなります。つまり、肉は消化に時間がかかり、胃腸の動きをゆっくりにして胃に長くとどまるため、腹持ちがいいのです。

胃にとどまる、と聞くと消化不良を連想するかもしれませんが、食物繊維も長く胃にとどまるから腸に送られるスピードがゆっくりになり、食後の血糖値の上昇を緩和させます。つまり、滞在時間が長い=体に悪いということではないのです。

一方、糖質は体内でもっとも速くエネルギーに転換される栄養素であり、他の食材に比べて消化速度も速いことがわかっています。

さらに、糖質メインの食事では血糖値の急上昇や急降下が起こってしまうため、さらに糖質を欲することになります。おにぎりやうどんといった炭水化物だけでランチを済ませてしまうと、すぐにおなかがすくのはこのため。間食したくなるのもある意味、当然のことなのです。

同じタンパク源である魚でもインクレチンは分泌されるのでは? と思う方もいるかもしれませんね。ですが、関西電力医学研究所の研究では、サバと牛肉の消化速度を比べた際、牛肉のほうが2倍以上消化が遅かったという結果が出ています。つまり腹持ちに関しても断然、肉が有利なのです。

ただし、消化管の機能が低下していて、胃酸が過剰に出て吐き気を感じたり、逆流性食道炎によって胸やけを起こしやすい方は、脂質の少ない赤身からスタートし、よく噛むなどの対策が必要です。