衣替えの季節になり、これまでコートなどの上着で隠していたお腹が気になる……。そう感じたらダイエットを考えなくてはいけないですよね。野菜、ごはんの前に「肉」を食べるだけの「ミートファーストダイエット」に挑戦してみませんか? ダイエット治療を専門とする工藤孝文氏が、肉→野菜→白米が食べ順のダイエットを教えてくれました。

※本記事は、工藤孝文:著『ミートファーストダイエット』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

やせホルモン「インクレチン」で太りにくくなる

ミートファーストの数あるダイエット効果の一つに、肥満の原因となる食後血糖値の上昇を抑える作用があります。これには、肉によって分泌される消化管ホルモンのインクレチンが深く関わっています。

インクレチンの成分がすい臓に働きかけ、血糖値を調整するホルモン=インスリンを必要に応じて増やし、さらに血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌も抑えてくれるのです。肉はほとんど糖質を含まないうえ、インクレチンによる血糖抑制作用があるため、食事のはじめに食べることで効果が最大限に発揮されるのです。

米国では、この効果に着目し、インクレチンと同様の働きを持つダイエット薬(GLP-1)が、2型糖尿病治療のほか、重度の肥満治療にも活用されています。つまり、インクレチンの効果を生かす「ミートファーストダイエット」は、最先端の医療に基づいた最強のダイエット法といえるのです。

じつは、野菜や炭水化物によってもインクレチンは分泌されるのですが、肉の脂質に対する分泌反応のほうが速く、胃酸の分泌が抑えられ、腸の消化スピードも遅くなるため、血糖値の上昇を抑えるには肉を先に食べるほうが有効なのです。

そもそも、血糖値の上昇はなぜ肥満を招くのでしょうか? 食べ物を食べると小腸から糖が吸収され、血糖値は15〜30分かけてゆるやかに上昇します。するとインスリンが分泌され、エネルギーに変換されたり余分な糖は脂肪に変換されたりします。

ところが、空腹時にいきなり糖質を多く含む炭水化物を食べると、血糖値が急上昇し、通常より多量のインスリンが分泌されます。血糖値が高い状態が続くと、血液中に活性酸素が生まれて細胞や血管の壁を傷つけてしまうためです。

その結果、糖分が必要以上に脂肪に変換されて太りやすくなるのです。さらに多量のインスリンで今度は血糖値が急降下するため、血糖値を正常に戻すために再び糖質を含む食べ物を欲する、という悪循環を生み出してしまいます。

こうした理由から、血糖値のコントロールがダイエットのカギになるのです。

▲やせホルモン「インクレチン」で太りにくくなる イメージ:Nishihama / PIXTA

海外の肥満治療薬でも、その効果が活用されている消化管ホルモン「インクレチン」。腸でインクレチンが分泌されると、脳が全身に食後のサインを出すため、胃も小さくなって、これ以上食事を入れないよう休息モード[胃の休息モードとは、満腹感が早まることで速やかに胃腸のぜんどう運動が収まるという意味]に入ります。

このメカニズムを利用しているのが「ミートファーストダイエット」。肉の脂肪(長鎖脂肪酸)は、炭水化物や食物繊維と違い、口や胃で分解できず胃をスルーし、すぐに十二指腸に送られるため、いち早くインクレチンを分泌させる効果が期待できます。

一方、野菜を食べてもインクレチンは分泌されますが、胃で分解されたあと、腸で腸内細菌と結びついて短鎖脂肪酸となりインクレチンが分泌されるため、少々遠回りなルートと言えます。ちなみに、肉のタンパク質も腸内細菌と結びつき短鎖脂肪酸となるため、ダブルルートでやせホルモン効果を得られるのです。

▲『ミートファーストダイエット』より