戦術レベルの工夫の継続が「チームの勝利」へ

ただ、いきなり「がんばるな」「気を利かせるな」と言われても、これまでがんばることや気を利かせることで評価されてきた人たちからすると、何をすればいいのかわからなくなるかもしれません。

だから、私は「がんばるな」「気を利かせるな」とセットで「工夫しろ」「継続しろ」という言葉をよく使います。これはつまり、チームの一員として全体最適に寄与する個別最適を高める「工夫」を怠らず、それを「継続」すべきだという意味です。

先ほども述べた通り、「がんばるな」「気を利かせるな」は、普段のトレーニングによって自分のキャパシティを広げておくことを否定するものではなく、逆に推奨するものです(日本社会における「がんばる」「気を利かせる」が往々にして組織の全体最適を妨げていたり、リーダーの権限の簒奪につながったりしているという問題点を指摘しているだけです)。

むしろ、戦術レベルの話に限れば、個別最適の追求、一任務の完遂こそ目指すべきものです。戦術レベルの任務(個人の業務)を滞りなく遂行するためにも、個人の能力のキャパシティを広げることは大いに推奨されるべきものです。

例えば、F1の世界では、マシンに取り付けたセンサーから数万におよぶ細かいデータを取り出し、ピットインの作業やエンジンの動作などに関する改善すべきポイントを明確にし、それらがミリ単位、コンマ数秒単位で改善されるよう工夫していると言います。

そうした戦術レベルの工夫の継続が、「チームの勝利」という戦略レベルの目標につながっているのです。

▲戦術レベルの工夫の継続が「チームの勝利」へ イメージ:ごじら / PIXTA

このように小さな改善を積み重ねて目標の達成につなげていくアプローチは「マージナル・ゲイン」と呼ばれ、スポーツに限らず、ビジネスの世界や国際支援活動の現場(より効果の高い支援方法の追究など)においても活用されています。

私の言う「工夫しろ」「継続しろ」も、この「マージナル・ゲイン」のような努力の方向性だとご理解ください。

とにかく、自分の限界・権限を超える方向に「がんばる」「気を利かせる」のではなく、より効率的に、より端的に、自分のできる範囲を広げる「工夫」をして、それを「継続」していくことのほうが、チームにとっても、自分にとっても大切なのです。