外国で仕事を見つける際に大切にしていたこと

――職歴の浅いうちから、旅行先のメキシコにあるタコス屋をはじめ、さまざまな仕事にチャレンジされています。外国での仕事をすることに対して何か不安はありませんでしたか?

サカモト メキシコには、いきなり自動車のフロントガラスに洗剤をかけてきて、洗車代を取ろうとしてくる人もいましたから、誰かの役に立つことが形にできれば、“何かの仕事にはなるだろうな”とは漠然と思っていました。

なので、現地では映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』に出てくるレオナルド・ディカプリオが演じる高校生のように、ひとまず周囲の見よう見まねで仕事を覚えていって、実際の仕事につなげていくような感じでした。僕は彼のような詐欺師ではないですけど(笑)。

――(笑)。外国の方とコミュニケーションを取る際に気をつけたことや、振る舞いの違いはありましたか?

サカモト ビジネスの取引でも友情関係を築くためでも、相手がどこの国の方であったとしても「相手の立場を考えながら話す」とか「相手がイヤがることをしない」といった、幼稚園生の頃に習ったお約束の延長線上にあるものが大切だと思っています。どんな関係であっても、相手の立場を考えながらお互いの波長を合わせていくことが大切ですね。

――メキシコやブラジルで働いてみて、 “ラテンなノリ”の方々と日本人の職業観の違いを感じたことはありましたか?

サカモト 仮に自分の仕事がなくなったとしても、仕事がないことをいろいろな人に素直に言える風土があって、日本人よりも失業を恐れていないような印象は感じました。日本とブラジルの両方を知る海外出身の友達に「日本には友情がない」と言われたことがあるんですよ。

日本人のなかには「自分の人生がうまくいっていないときには、恥ずかしいから友達に会えない」という風潮がありますが、彼らは「うまくいかないときこそ、友達を励ましたり、救ってあげることが大切だ」という考えを持っていて、その辺りの文化の違いはあると思います。

▲ネイマールという人生を過ごすのは大変なことだと思います

――ブラジル滞在時には、サントスFCの広報担当になり、当時在籍していたネイマール選手(現パリ・サンジェルマン)とも対面を果たしました。この本にはその様子も描かれていますが、自由な振る舞いのイメージもあるネイマール選手の印象を聞かせてください。

サカモト 第一印象は“素朴でいい子だな”と思いました。まだまだ当時のネイマール選手は20歳になるかどうかの若手選手でしたけど、プレーを見たときに凄まじい衝撃を受けたので、きっと近いうちに世界一のサッカー選手になるんだろう、と思ったような気がします。

――どの辺りにスゴさを感じました?

サカモト サントスFCは、いわゆるトップ下や司令塔と言われるような、卓越した技術の選手を長年に渡って多く輩出してきた歴史があるんですけど、当時のブラジルは欧州サッカーの影響で、強いフィジカルと守備が重視されるようになってきている時期でした。

そのような時代に、ストリートで培った即興的なスタイルのサッカーが持ち味のネイマール選手が颯爽と現れて、コパ・リベルタドーレス杯や南米年間最優秀選手を獲得した。細身のネイマール選手が自分のスタイルを貫いて栄冠を手にしたことに、とにかく驚かされたことを覚えています。

――ネイマール選手をはじめとするブラジルのサッカー選手は、どのように日々の試合に向き合っているのでしょう?

サカモト 音楽を聴きながら自由奔放に過ごす姿がクローズアップされがちですが、クリスチャンの多いブラジルの選手たちは、試合前のロッカールームで祈り捧げた途端に、ガラリと真剣な眼差しに変わるんですよ。ネイマール選手に限らず、ブラジルの選手はそのような感じのスタンスで、気持ちを切り替えて試合に向き合っていることが多いと思います。

――近年では“お騒がせ”のイメージもありますが、ネイマール選手のそういった報道をどのようにご覧になられていますか?

サカモト 「ネイマールという人生を過ごすのは、本当に大変なことなんだろうな」ということですかね。たとえ巨額の移籍金でチームを移籍したとしても、半年立たないうちに知らないところから新たな移籍話が湧き上がってきたり、姿を現しただけでたくさんのカメラに囲まれる日々を過ごしている。平穏な日々がないネイマール選手ならではの苦労やストレスはたくさんあるんだろうな、と感じることは多いです。