遠藤航選手や原口元気選手の共通点

――その後、遠藤航選手や原口元気選手(いずれもVfBシュトゥットガルト)の語学コーチをされたとのことですが、トップ選手ならでは取り組み方の違いや特徴はありましたか?

サカモト 遠藤選手や原口選手に限らず、伸びていく生徒には向上心があって、自分に貪欲だという特徴があるんです。柔軟な考えを持っていて貪欲さもあり、自分に必要なことをいつも考えているからこそ、日本代表にまで登り詰められたんだろうと、僕が講師の立場で二人を見ていて感じさせられました。

――サカモトさんが好きなことを仕事にするために心がけていることは?

サカモト 自分自身では、好きなことを仕事にできているかはわからないんですけど、まずは“しっくりこないことはしない”こと、その上で“好きになれそうで、かつ自分にも
できそうなこと”を見つけて形にしていくように意識しています。

――なるほど、それはとてもわかりやすいアドバイスですね。では、サカモトさんが「好きな仕事」をするまでの失敗談などあれば、アドバイスとしてお聞きしたいです。

サカモト 「自分がやりたいこと」と「自分にとって必要なもの」は、似ているようですが全く異なるものなので、その違いを受け止めることが大切だと思います。僕の場合は、ブラジル移住を目指したことがそれに該当するんですけど、“行きたい”とは思いましたし、いろいろなものが得られたので失敗ではありませんでしたが、絶対に必要なものではなかったと思っていますから。

近年は「好きな仕事をすること」がキャッチコピーになっていますが、好きなことが見つからない人にとっては、この風潮は単なるプレッシャーでしかないように思うんです。あまり興味がないけど得意なものを仕事にしたら、そのうち好きな仕事になっていくかもしれませんし、もし“自由に生きていこう”というのであれば、好きなことを仕事にしない選択肢があってもいいと思う。

それでも好きなことがあって、それを仕事にしたいと思うのなら、自分に「なぜ?」と問いかけながら、自問自答を繰り返していくことから始めるべきなのかなと思います。僕はこれまでにサッカーや教育に関わってきましたけど、程よく携わるから楽しいのであって、生活の全てを捧げたらもしかしたら楽しくなくなるかもしれない。自分なりの「好き」のバランスを見つけながら、人生を過ごしていってほしいなと思います。

――ありがとうございます。サカモトさんの今後の目標、やってみたいことはありますか?

サカモト 大学時代にやりたいと思っていた、子ども向けの物語を書いてみたいです。まずは「事実は小説よりも奇なり」という言葉通りの人生を歩んでしまった自分自身のことを本にしようと思っていたので、これでようやく取り掛かれる状況になりました。とはいえ、今はまだほとんど書けていないので、じっくりと書き進めていけたらと思っています。


プロフィール
 
タカサカモト
フットリンガル代表 1985年4月12日、鳥取県生まれ。東京大学文学部卒業。 田舎から東大に進学後、人生に迷う。大学の恩師の助言で自分に素直に生きた結果、メキシコでタコス屋見習い、鳥取で学び場づくり、ブラジルの名門サッカークラブ広報、ネイマール選手の通訳などを経験。その後、フットリンガルを創業し、国際舞台での活躍を志すプロサッカー選手を中心に、語学や異文化コミュニケーション等を教えている。高校卒業までは鳥取弁しか話せなかったが、20代で英語・スペイン語・ポルトガル語を習得し、現在は韓国語・イタリア語・ドイツ語を学んでいる。浦和で子育て中心の生活を送る1児の父。 Twitter:@grantottorino、Instagram:@takafotos