野党第2党・日本維新の会がその存在感を増している。2023年4月の統一地方選と衆参の補欠選挙では、奈良県知事選と衆院和歌山1区補選で、自民党が推す候補を破り、見事に当選。目標としていた「地方議員600人」も実現した。
維新躍進の原動力となったのは、大阪府知事選挙で再選を果たした大阪府の吉村洋文知事に違いない。関西での圧倒的な知名度&人気を活かして圧勝。2期目は「教育無償化実現」なども進めることを示すなど、その政治手腕にますます注目が集まっている。そんな若き大阪府知事が信頼を集める理由を、長きにわたり維新を取材するテレビプロデューサーが、吉村氏の発した言葉から徹底分析する。
※本記事は、結城豊弘:著『吉村洋文の言葉101 -日本を牽引する若きリーダーの覚悟と勇気-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
全国区の政党へ
「自民党をビビらせる政党になりたい」
これは2021年10月20日、『ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】YouTube』 で吉村氏が口にした言葉だ。
2023年1月10日のNHKの世論調査によれば、各党の支持率は、自民党が38.9%。立憲民主党が5.7%。日本維新の会が3.4%。公明党が3.0%。共産党が2.5%。国民民主党が1.0%となっている。れいわ新選組、社民党、NHK党、参政党ともに1%に満たない。「特に支持している政党はない」が36.7%となっている。
岸田内閣の支持率は、前月の調査より3ポイント下がり45%となった。岸田首相の支持率が下がるなか、維新としても存在感を示したいところ。ただし、取材をすると維新のイメージは、自民党の補完勢力や自民党に次ぐ保守政党という感想が戻ってくる。政策面や主張で自民党とどう違うのか、その打ち出しが今後の課題だ。そして組織率の全国的な充実も選挙で勝つためには欠かせない。
各労組や支援団体を政治基盤に持つ政党は強い。2022年7月10日投開票の参院選挙では、自民63議席、公明13議席、立憲17議席に次いで、日本維新の会は12議席を獲得した。
比例代表では維新が8議席を手に入れ、立憲の7議席を抜き、野党ではトップの議席となった。都道府県別に調べてみると、立憲民主党の得票数を維新が上回ったのは、19都府県にのぼる。この数字は2021年の衆院選挙の2倍以上に増えている。明らかに全国的な知名度と支持を伸ばしていると言えるのではないか。
その要因の一つは、吉村氏のコロナ対応やテレビ出演、そして記者会見の力ではないかと僕は考える。コロナ以降、吉村氏、松井氏のテレビ露出は確実に増え、“大阪の政党”というイメージは橋下氏が代表を務めた頃より認知度を増している。
参院選挙で維新は候補を立てられなかった地域も多かった。良い立候補者を確保し、選挙を組織的にバックアップしていったなら、吉村氏が言う通り、自民党をビビらせる政党に成長できるチャンスがないわけではない。
維新躍進の夜明け前
「東京の皆さん、今の自民党政権は強いが、ちょっとナメくさっていませんか」
2022年6月の街頭演説での発言だ。東京・銀座三越前での街頭演説。東京で関西弁を聞くと昔は違和感があった。しかし、明石家さんまさんや笑福亭鶴瓶さん、そして芸人ブームが日本を席巻し、今では関西弁は、東京弁の次に認知を得た。
2022年6月の参院選挙。ガラス張りの街宣車。日本維新の会の音喜多駿参院議員がマイクを握り、吉村洋文知事を紹介した。「あ、吉村さんだ」。若い女の子が吉村氏にスマホを向ける。足を止める若い男女のカップル。新型コロナウイルスへの対応や記者会見で、吉村氏の顔は一気に全国区になった。
吉村氏の第一声は「皆さん、自民党は、ちょっとナメくさっていませんか」。東京のど真ん中で、いきなりの関西弁で大丈夫かしらと思ったが、観衆は聞いている。
「国民は負担ばかり押し付けられる。立憲と自民は持ちつ持たれつ。大阪では自民は維新にビビっているんですよ。みんなで自民党に一泡ふかせましょうやないですか」。そのあと、新橋での演説でも同じ。東京の人たちも吉村氏の応援演説を聞いている。
「大阪の政党でしょ」と、橋下府知事が訴えていた頃との違いを僕は感じた。あの頃、東京の人々は維新を地域政党と見ていたし、橋下徹氏の個人政党的な見方をしていた。
ところが、この参院選では違った。東京の人たちも、明らかに自民とも立憲とも違う政党として維新を見ている。僕はそう強く感じたのだった。