なぜユダヤ人は日本までやって来たのか?

茂木 田中先生のおっしゃる「ユダヤ人が日本にやって来た」という話は、ちょっと信じられないという方も多いのではと思います。古代において日本に来た外国人といえば、中国や朝鮮半島など東アジアからの来訪者と考えられています。

田中 では、正倉院に残される西欧のさまざまな宝物をどう考えるのでしょうか? また、中国大陸の人々は海を渡ろうとはしないし、石器時代の遺跡の分布からわかるように、もともと朝鮮半島には人が多く住んでいなかったということも大事な視点です。そして、ユダヤ人には移動をしなければならない理由があったと私は考えます。

茂木 ユダヤ人が移動をしなければならなかった強い理由が、紀元前13世紀より、各時代ごとにあり、日本までやって来た人々がいたということですね。

田中 私はそれを「5つの波」と切り分けて考えてみました。縄文後期から弥生時代にかかる紀元前13世紀以降に、彼らは初めて日本にやって来ます。そして、日本神話に出てくる天照大御神(アマテラス)といった人々(神々)と交流を開始するのです。

▲『日本とユダヤの古代史&世界史』(小社刊)より

茂木 いわゆる「日ユ同祖論」とは違いますよね?

田中 まったく違います。日本列島に本来の日本人、すなわち縄文人がいたところに、ユダヤ人たちが入ってきて同化したのです。正しくは「日ユ同化論」というべきでしょう。

茂木 彼らはなぜ遙か彼方にある日本までやって来たのか? どうやって日本までたどり着いたのか…? 

田中 『旧約聖書』のモーセ五書の最後の章『申命記』に、こういうことが書かれています。主はあなたとあなたが立てた王とを携えて、あなたもあなたの先祖も知らない国に移されるであろう。木や石で作った他の神々にあなたは仕えるであろう。(『申命記』第28章36節)

▲「十戒の石板を破壊するモーセ」(レンブラント) 出典:Wikimedia Commons

茂木 木や石でつくった神さま……日本の古神道を思い出させます。

田中 日本では神さまのことを「柱」と呼び、御神木(ごしんぼく)も各地にあります。石というのは、まさに磐座(いわくら)のことですね。「あなたの先祖も知らない国」とは、日本だったということです。

『モーセ五書』というのは、モーセが書いたとは思えず、その弟子たちが書いたものとされますが、紀元前13世紀、少なくともその頃にはユダヤ人たちは世界に散っていった、という話が残っているわけです。日本という遠い地へ行った同胞たちの記憶を、この『申命記』に書いたのだろうと思うのです。

茂木 古代ユダヤ人渡来説を初めて目にした読者は「なんと荒唐無稽な」と思われるかもしれません。しかし、神道の儀礼・祭りや神社建築、記紀神話にいたるまで、古代ユダヤ教との共通点がたくさんあるのです。古代史の面白さ、まさに謎解きの面白さがここにあります。