「常勝チーム」大阪桐蔭はなぜ敗退したのか
大会前の記事の最後は、やはり大阪桐蔭について書いていきたい。大阪桐蔭といえば、毎年戦力的に充実している年が多い。
そのため、高校生ながらも「優勝して当たり前」と見られがちだが、多くの世代の野球ファンなら誰もが知るタレント軍団をまとめたうえで、優勝に導くために個々の能力を活かし切れている。
2022年の世代は、高い総合力を活かして明治神宮大会・センバツ・国体の三冠を達成している。
今年の世代も、明治神宮大会を連覇し、センバツもベスト4とまずまずのスタートを切っていたが、予選ではライバル履正社に力負けをした。
大きな要因は、やはり打撃力の伸び悩みだろう。この大会に関しては、履正社が打撃力を中心に全ての面で上回っていた。
準々決勝までは順調な試合運びだったが、準決勝からはほとんど打てていなかった。この課題は、センバツのときから言われており、センバツから夏の予選を見ると、打順が固定されていたのは、山田太成と徳丸快晴のみである。
また、起爆剤として長打力があるラマル・ギービン・ラタナヤケを4番に座らせ、春季大会で成長が著しかった笹井知哉を1番に抜擢。
吉田翔輝をセンターで起用するなど、これまでの世代と比較してもテコ入れしていたのがわかる。
しかし、一線級以上の相手には厳しい試合が多かった。
準決勝の箕面学園戦では、島津汰均の前に苦しむ。
さらに、決勝の履正社戦では福田幸之介に完璧に抑えられてしまったのだ。
課題とされていた打線は、なかなか向上できずに終わったが、もう一点懸念材料もあった。
それは、西谷浩一氏の采配力に陰りが見え始めたことだ。
これは、この夏の予選はもちろんのこと、センバツの報徳学園戦や前年夏の下関国際戦にも見受けられた。全体的に後手で動いているため、試合中の場面ごとの対応力が下がっている傾向はあるだろう。
また、勝ち続けていたがゆえに、置きにいく采配や起用が多いことがある。これは、成功体験がさまざまな可能性を邪魔している部分もあるではないだろうか。
そのため、ラマルなどの選手をセンバツでは試さないまま終わり、急務として春季大会で試していた。
また、高校野球の世界において大阪桐蔭は「常勝チーム」であるがゆえに、相手チームが押せ押せのムードになれば「あの大阪桐蔭に勝てるチームが現れるかもしれない」という期待感から、球場全体が大阪桐蔭にとってアウェイになる。
今後は、ビハインドのときにアウェイな雰囲気を押し切る強者の野球を展開できるかがカギになるだろう。
ただ、高校野球ファンはもちろんのこと、実際にプレーをしている高校球児や指導者からも、大阪桐蔭はどの世代もしっかりとピークを合わせてくるだろうという期待感はあるのではないだろうか。
球場の雰囲気など含めて、選手たちは大きなプレッシャーのなかで、プレーをしているに違いない。
夏を制してこそホンモノと言われる高校野球で、来年こそ大阪桐蔭の令和初となる夏制覇に期待して見ていきたい。