喋れなくても一緒にいることで家族になれる
――ネパールの美味しいものを教えてください。
グルン モモは絶対に外せません! 日本でいう蒸し餃子みたいなものです。日本が醤油を使うように、ネパールはカレーを使うから、どの食材もカレー味なんですよ(笑)。あとは、チャウミン(焼きそば)とかも、そこまでカレー味じゃないので日本人にはすごくおすすめです。
〇ネパールの国民食MOMOを日本で作ってみた
――国際結婚だと食文化が異なりますよね。苦労した部分などありましたでしょうか。
グルン 苦労、ありました! 本当に大変でしたね。私、胃腸が弱いみたいで……例えば生水はもちろんですが、沸騰させた水もダメなんです。歯磨きはミネラルウォーターを使ったり、食器は浸け置きタイプの消毒薬を使ったりしてます。でも、ネパールに移住することになったときのことを考えて、少しずつ体を慣らしていかなきゃと思っているんです。
19歳で初めてネパールに行ったときに、何も知らないから普通に食べたり飲んだりしたら、次の日に倒れて意識を失ってしまって……。よく言う“白い世界”を見たんですよ。そんなことがあったから、行って帰ってを繰り返してだんだんスパンを短くしつつ、徐々に体を慣らしていきたいんです。
――言葉はどうですか?
グルン 全然です(笑)。YouTubeを編集しながら、ちょっとずつ覚えているんですけど、新潟に帰ってくると日本語しか喋らないからすぐ忘れちゃって。なかなか覚えられないんです。
――言葉でコミュニケーションを取れない状況下でも、閉じこもらないでいられるのがすごいです。何かコツがあるのでしょうか。
グルン 私も20歳で初めてネパールに行ったときは、閉じこもったこともあったんですよ。何を言っているかわからないし……「なんでちゃんと訳さないの」「何を喋っているかわかんないじゃん」とか、旦那っちともケンカするんですよ。
でも、喋れないのって私が勉強してないからだなって。どうしようかなと考えていたら、旦那っちが「この家は、このみの家なんだから好きにしていいんだけど、それで後悔はないの?」と言われたんです。今のままだったら後悔するかも……と思って、喋れなくても一緒の空間にいるようにすることから始めました。
そしたら、みんなが気遣って喋りかけてくれるんですよね。その気遣いがうれしくて、私もだんだん楽しくなって、言葉が通じなくても日本語で話しかけたりして、今の関係ができあがった感じです。
――なるほど。ネパールのご家族から言われてうれしかった言葉はありますか。
グルン ご飯を作ったときに「ミトチャ(おいしい)」と言われると、やっぱりうれしいですね。あと、家族でお茶を飲みながら団らんしていたときに、家族みんなが「本当に、このみと結婚してよかったね」と言ってくれたんです。
――それはすごくうれしいですね。
グルン はい。うれしいです。 今はネパールの家庭料理まだまだですが、いずれかはもっと美味しく作れるようになりたいですね!
今後は「自分と誰かの居場所を作りたい」
――ネパールに行き始めて何年経ちますか?
グルン 19歳で初めて行ってから、コロナ禍でなかなか行けなくなってしまって。ようやく今年から本格的に動いているので、まだ行ったり来たりの生活が始まったばかりです。
――動画を見ていると、どことなく懐かしいく感じる風景などがあって、ネパールに行きたくなりました。
グルン ネパールには日本人の観光客の方もたくさんいらっしゃるんですよ! エベレストなど有名な山が多くあるので、登山をされる方もいらっしゃるみたいですね。他にも最近はおしゃれなカフェなどもできていて、これからどんどん盛り上がっていくんじゃないかなって思います。
――今後はネパールの良さを発信していきたいと。
グルン そうですね。ありがたいことに、たくさんの方にYouTubeやSNSなどで見ていただけるようになって、私の母もそうだったのですが、ネパールを「知らない・わからない」ということで生まれる勘違いやネガティブなイメージを、私の動画で減らせていけたらなと思っていて。こういった動画を作るYouTubeチームを、いつか作れたらな~なんて思ってます(笑)。
――動画編集とかに興味がありそうな人は周りにいるんですか?
グルン 結構いますね。興味はあるけどさっぱりわからんって、笑顔でみんな言います(笑)。私もネパールで楽しいこと、うれしいことを仲良くなった人と分かち合いたいし、何か協力できる居場所、そういう場所を作りたいよねって話しています。
――それは素晴らしいですね。それ以外の活動で目標はありますか?
グルン ネパールのテレビ番組や日本のテレビ番組に家族と出演してみたいです(笑)。私の家族はテレビが大好きで、ずっと見てるんですよ。「テレビに出るよ」と言ったら(ネパールの)マミーとババ(ネパール語で「父親」のこと)がめちゃくちゃ喜ぶと思うので、それも目標? かもしれないですね(笑)。
あとは、私自身が適応障害や躁鬱などいろいろ経験してきたんですが、そのときに一人ではなく、いつも支えてくれる人たちがいて、そのおかげて今の私があります。
なので、さっきの話と重複しますが自分の居場所もそうだし、誰かの居場所を作るのも目標かもしれないですね。そのためにいろいろな知識や感情を経験して「そういう考え方もあるんだね」と言える人でありたいし、何事も否定から始めるのではなく、拒否のない人間になりたいなと思います。