淡路島にある「淡路ファームパーク イングランドの丘」は、コアラやウサギ、ヒツジなどの可愛らしい動物たちと出会うことができる動物園。この淡路ファームパークに勤務する飼育員さんが始めた企画「飼育員への質問回答コーナー」が、SNSで大きな反響を呼んでいる。

そこで今回のインタビューでは、SNSの企画を発案した飼育員の後藤敦さんに、動物園の裏側や飼育員の仕事について聞きました。

▲後藤敦【WANI BOOKS-NewsCrunch-Interview】

想像以上に多岐にわたる飼育員の仕事

―― 飼育員としての主な業務や一日の過ごし方について教えてください。ドラマなどでは、動物にトラブルがあったときにすぐ駆けつけるようなシーンが印象的ですが、実際の業務はどのようなものですか?

後藤 そうですね、ドラマや映画でのイメージとしては「何かあったらすぐ動物のところへ」というシーンが多いですが、実際の業務はもっと地味です。主に清掃作業や餌の準備など、日々のルーティンワークが中心です。私たち飼育員としては、緊急事態が起こらないことを願っています。

そのためにも、日々の仕事がとても大切で、掃除は動物の健康状態に直結するため、手を抜くことはできません。また餌の準備に関しても、動物の体調や季節、餌の仕入れ状況によって微調整が必要です。この仕事は臨機応変に対応できる人でないと難しい部分があります。

―― 動物のうんちを見て、体調の変化を見つけるのは大切な業務の一部ですよね。

後藤 そうですね。子育てをしている方がお子さんのオムツを変える際に、ちょっとした変化を気にするのと同じです。たとえば「今日のうんちは匂いがおかしい」と感じることもあります。動物のうんちには多くの情報が詰まっているので、掃除の際にはそれを見逃さないようにしています。

―― 清掃作業や餌の準備など、日々のルーティンワークの仕事は全体の何パーセントくらいを占めるのでしょうか?

後藤 だいたい6〜7割を占めます。残りの3〜4割の時間で、動物のトレーニングや大学との共同研究やイベントの準備、事務作業などをしています。とくに動物のトレーニングは、昔のようにショーを見せるためだけでなく、最近では治療を受ける際に動物に負担をかけないようなトレーニングも増えてきています。たとえば、注射を受ける際に動物が自ら注射しやすい姿勢を取るようなトレーニングです。

―― 素朴な疑問なのですが、動物の体重の測り方はどうしているのでしょうか? コアラやヒツジはおとなしいので体重計に乗せられそうなイメージがありますが、鳥などはどうするのか想像ができなくて……。

後藤 そうですね、鳥の体重測定もトレーニングの一環として行っています。インコやオウムの場合、枝付きの体重計を自作して、その枝に止まるトレーニングをします。鳥を捕まえることは大変ですし、鳥たちにとっても大きなストレスになるので、自主的に体重計に乗ってもらう方法を考えています。

▲自作の鳥の体重計

―― それは面白い方法ですね。大きな動物の場合は?

後藤 ウチには大きな動物はいないのですが、小型の動物とは異なる方法を取っていると思います。体重計が埋め込まれた場所に動物を誘導したりして、体重を測ることが多いですね。体調を管理するうえでも体重は重要な要素です。体重に基づいて薬の量などが決まるため、正確に測定する必要があります。

―― 飼育員さんたちは通常、何時頃から勤務を開始するのでしょうか?

後藤 開園の1時間前には出勤しています。動物や施設のチェック、掃除などの作業を行い、お客さまを迎える準備をします。それから掃除や餌やりなどの日常業務をしたりしていると、あっという間に閉園時間になりますね。それから動物を寝室に入れたり、施設のチェックをします。朝もチェックはしていますが、夕方も施設の不備がないかを確認しています。とくに動物が脱走することのないように、その確認は徹底しているので、これまで脱走した動物はいません(笑)。

―― 台風のシーズンなど天候が悪いとき、動物たちの管理はどのような対応をしていますか?

後藤 台風や大雨の際は、基本的に動物を展示場から寝室に移動させて保護します。外からの刺激や音に対しては、早めに出勤して異常がないかを念入りに確認します。台風での怪我やストレスによるトラブルはこれまでほとんどありません。日頃のケアが大切だと思っています。

―― すごく大変な仕事であることが伝わってきました。まとまった休日は取れるのでしょうか。

後藤 担当する動物がいると、一般的な会社員のようなまとまった休日は取りにくいです。そのため長期の旅行などは難しく、近場での休暇が多くなりがちですね。休みの日には観葉植物の手入れをしたり、音楽を聞いたり、映画を見たり、漫画を読んだりしています。そういった趣味から仕事に役立つヒントやアイディアを得ることもあります。

―― ちなみに好きな漫画は?

後藤 昔から『スラムダンク』が好きです。映画も見ましたし、最近のW杯の試合も熱かったですよね。ただ僕自身は運動が苦手なんですけど(笑)。