日本人スターの不在が続くヤンキース

大前提として「戦力としての極めて高い価値」が獲得の意義のほぼ全てではあるもの、「日本人選手の移籍には日本マーケットが付いてくる」というメリットもあります。

以前の記事でも取り上げましたが、ヤンキースは2020年オフに田中将大選手が退団をして以降、日本人選手が在籍していません。2003年の松井秀喜選手入団以降、ほぼ途切れずに埋まっていたスター日本人選手の座が、もう3年にもわたって空いたままになっています。

しかし、MLBにとって日本マーケットの存在の大きさは、大谷フィーバーを見れば説明は不要でしょう。肝心の大谷選手に大半の注目や客足を持っていかれてしまうのは必然的ではありますが、日本におけるMLBの人気がいま絶頂期であることは歴然。そのマーケットを取り逃がしているヤンキースにとって、山本選手の獲得は「戦力強化&日本マーケット再獲得」の両軸を達成できるパーフェクト・フィットではないでしょうか。

吉田正尚選手(ボストン・レッドソックス)や千賀滉大選手(ニューヨーク・メッツ)など多くの有力選手がMLBの門を叩きに渡米してきたなか、近年は日本人選手の獲得にまったく動かなかったヤンキースが重い腰を上げたことは、象徴的な出来事と言えるでしょう。

しかも、このタイミングでのキャッシュマンGM訪日は、前述の田中選手の獲得調査時のみならず、2017年8月に大谷翔平選手の視察のために副GMのジーン・アフターマン氏と来日をした際ともカブる動き。他にもシニアアドバイザーのオマール・ミナヤン氏やスカウトディレクターのマット・デイリー氏がすでに現地で視察をしており、とにかく獲得を熱望しているのが露わになっています。

山本由伸選手がニューヨークへ来たいか、来てくれるかは別として、ヤンキース側としては日本で再びチームが大々的に取り上げられる準備が整ったと言えるでしょう(もし補強から離脱してしまったら、ヤンキース戦がNHK BSなどテレビ放送で打ち切りにならないことだけ願いたいですね)。