芸能プロダクションを経営してるんです

――東村さんはお笑い芸人を中心とした芸能プロダクション『東村プロダクション』を作られています。

板尾 ええ! プロダクションやってるんですか?

東村 板尾さんの前で話すのは超恥ずかしいんですけど……。『はじめの一歩』の先生がボクシングジムをやられているんですけど、まあ私もそのような感じです。もともとギャグ漫画家なので(笑)。いろんな漫画のネタをやる芸人さんを集めた漫画ライブみたいなのをやったのが、運の尽きだったんです。好きなことなので、気晴らしにもなります。

板尾 所属芸人さんはどのくらい?

東村 今は25人くらいです。ローカル番組に出演させてもらったり、『マツコ会議』にも出させていただいたりしています。最初は「お笑いのライブをやっても誰もこないから、先生が主催して司会をやってください」って言われて。“自分の趣味だし、いいかな”と思って主催したら、私のファンの人が来てくれるじゃないですか。

それを何回か慈善事業でやっていたら、なかなか売れない子たちが『M-1』とか『キングオブコント』にエントリーするときに「所属会社名に『東村プロダクション』って書いていいですか?」って言われて、別にいいよって。そこからはもう転がり落ちるように(笑)。

板尾 登記はされているんですか?

東村 それがしていたんですよ。漫画家になるときに、株式会社東村プロダクションを20年ぐらい前に作ったんです。お笑いをやることになったときに謄本の事業内容の欄を見てみたら、漫画制作の次に「芸能プロダクション経営」って書いていたんですよ。「いいじゃん! 入ってるじゃん!」みたいになって。

今は、私がネタを作っている組が3組くらいいたり、単発でネタを書いたりしています。もともとギャグ漫画家なので、そういうのはできるんですよ。自分で演じてビデオを撮って「これをやってみて」とか言ったり。お笑いが好きだし、憧れの世界でもあるから楽しいですよ。自分でライブをやると、それこそ吉本の方がゲストで出てくれたりして。芸人さんに会えるからうれしいです(笑)。

板尾 すごいですね。

東村 でも、うちの芸人さんってみんなおとなしくて。お酒の場でも、うちの芸人さんが言ったことで笑ったことがないくらいです(笑)。昔は、学生の頃に面白かった子とか、みんなを笑わせていた子が芸人になっていたけど、今っておとなしい子が目指すカルチャーになっている印象がありますね。

板尾 それは確かに僕も感じるところですね。多様化しているのかもしれないですね。

 

その人たちにしか出せない世界観が大事

――板尾さんは賞レースの審査員もされる立場ですが、そこでの基準になるものって何かあるのでしょうか。

板尾 賞レースによって審査の仕方はそれぞれ違いますが、客観的には、ネタや構成のよさやテクニックよりも、僕はその人の面白さが決め手になりますね。考え方とか、表情とか、声の出し方とか、その人にもともと備わっているもの。そういう面白さのポイントは高いですね。

もちろんネタが面白い、漫才が面白いっていうのもあるんですけど、それだけだとダメなんですよ。同じことを違う人がやっても、練習したらできるんちゃうかと思われたらダメ。芸人という仕事を選んだ時点で、面白いことを永遠にやり続けないといけないので、自分が持っている武器で勝負していったほうがどんどん面白くなっていくと思いますし、そういう人が賞レースでも選ばれると思ってます。

ネタが面白い人、テクニックがすごい人はたくさんいるけど、なんかこの二人の空気がいいなとか、こいつが言うから面白いんやろうなっていう、その人たちにしか出せない世界観はやっぱり大事だと思いますね。

東村 私も漫画を審査するとき、“興(きょう)があるかないか”を大事にしています。“普通とは少し違う感じ”って意味に取ってるんですけど、たまたま見たJYPの社長さんがオーディション番組で“興”の話をしていて「さすがだな、いいこと言うな!」って(笑)。

絵が上手な人も、話がいい感じの人もたくさんいるんだけど、個性というか、リズムというか……その人独自のものがあるといいですね。『刃牙(バキ)』とか、すごく興があると思います。

板尾 歌手と一緒ですよね。

東村 そうそうそう。サザンの桑田さんとか、興しかないと思います。独自の歌い方を発明してますよね。

板尾 森進一さんとか、八代亜紀さんとかも。

東村 興って芸なんですよ。しかも他者が認識できるレベルの芸。これまで言語化するのが難しかったんですけど、K-POPオーディション番組のおかげで「私が言いたかったことはこれだ!」とわかりました。

≫≫≫ 東村さんが聞いてみたかった質問に板尾さんが答える「板尾と漫画家-東村アキコ-」後編は、10月20日に公開予定です。お楽しみに!

(取材:萌映)


<イベント情報>
関西演劇祭 2023
日程:2023年11月11日(土)~19日(日) ※休演日あり
場所:COOL JAPAN PARK OSAKA SS ホール(大阪市中央区大阪城3-6)
参加劇団:Artist Unit イカスケ / 演劇 組織 KIMYO / 餓鬼 の断食 劇団イン・ノート / 劇団FAX / バイク劇団バイク / PandA / MousePiece ree / 無名劇団 / ヨルノサンポ団