若手、実績組の融合で優勝争いに食い込めるか

ここ2年の巨人は、Bクラスと屈辱的なシーズンを送っているが、今シーズンのオフは大胆な血の入れ替えを行っている。

2020年からは、似たようなリリーフ陣の運用だったり、2021年終盤からは同じような負け方を繰り返しているため、普段から見ているファンはデジャヴのような感覚が多数あっただろう。

ただ、今シーズンは弱いながらも、投打で若手が台頭しており、来シーズン以降に期待できるシーズンだった。

野手陣は、坂本が遊撃手から三塁手にコンバート後、門脇が空いた遊撃手の穴を埋めた。

守備だけではなく、打撃面でも後半戦は打率が一気に向上した。守備は現在でもトップクラスの選手だが、来年も後半戦のような打撃ができれば、球界を代表する遊撃手になる可能性もあるだろう。

また、プロ3年目の秋広優人が大きく飛躍した。今シーズンは、一軍で初のフルシーズンを戦い抜き、来シーズン以降は中軸として期待ができる結果を残した。

この門脇と秋広は、11月に開催されるアジアプロ野球チャンピオンシップ2023の日本代表に選出されている。

初の国際大会で、大舞台の雰囲気から初見の対応力などを吸収してほしいところだ。

さらに、浅野は1年目でシーズン初ホームランを記録するなどの活躍を見せている。外野の一角として来年はレギュラー奪取できるか注目が集まる。

この若手から刺激を受けるように坂本も復活を遂げた。主砲の岡本和真とともに、チームを引っ張っていくことに期待したい。

投手陣は、エースの戸郷翔征を中心に二桁勝利を挙げた山﨑伊織やヨアンダー・メンデス、フォスター・グリフィン、赤星優志らがいる。

赤星に関しては、夏場以降の活躍もあり、アジアチャンピオンシップ2023のメンバーに選出されている。

先発陣に関しては、ベテランの菅野智之を含め枚数が揃いつつあるなかで、課題なのはリリーフ陣だ。今シーズンは、クローザーの大勢が長期離脱を余儀なくされ、その他の投手陣も苦しんだシーズンだった。

そのなかで中川皓太が復活を遂げ、新外国人のアルベルト・バルドナードもシーズン途中から活躍を見せた。

ただ、巨人は投手陣の育成面だけではなく、運用やマネジメント面も課題だ。中川の場合は、これまでの故障や怪我を考えると、必要のない場面での登板による勤続疲労が原因とされている。

また、新外国人のバルドナードに関しても、これまでのリリーフで活躍したアルキメデス・カミネーロ、ルビー・デラロサを獲得した翌年を見ると、体重増加における不調が見受けられたため、上手にマネジメントしていくことが重要だろう。

その他、田中千晴や横川凱、井上温大あたりの成長も必要不可欠な状況である。

今シーズンもBクラスに終わったこともあり、大きく血の入れ替えを行い、ドラフトで即戦力を獲得した。来シーズンは実績組と若手が、うまく融合する新しい巨人軍が見られることに期待していきたい。

▲2024年シーズン巨人の指揮を執る阿部慎之助新監督 写真:アフロスポーツ

プロフィール
ゴジキ(@godziki_55)
野球著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』『坂本勇人論』(いずれもインプレスICE新書)、『アンチデータベースボール』(カンゼン)を出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディア取材多数。最新作は『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『21世紀プロ野球戦術大全』(イースト・プレス)。X(旧Twitter):@godziki_55