数々のドラマや映画、舞台に出演する俳優・南沢奈央。彼女は寄席へ足しげく通う落語通としても有名だ。そんな彼女の落語愛が爆発した初のエッセイ集『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)が11月1日に刊行された。ニュースクランチのインタビューでは、エッセイを書くことになった経緯から、彼女が感じる落語の魅力、衝撃を受けた高座などを聞いた。

▲南沢奈央【WANI BOOKS-NewsCrunch-Interview】

「やっぱり落語って面白い」と思った

――南沢さんが落語好きなのは存じ上げていたつもりだったのですが、『今日も寄席に行きたくなって』を読んで、これほどまでか! と驚かされました。

南沢 ありがとうございます(笑)。

――改めて、このエッセイを書くことになった経緯をお聞かせください。

南沢 新潮社さんからエッセイの話をいただいて、担当者さんとの話し合いのなかで、大好きな落語について書こうということになりました。一人でも多くの方に落語に触れてもらいたくて、始めは入門書とかガイドのような感じで書くつもりだったんです。「こんな噺があるよ」とか「こんな人がいるよ」っていうのを中心にして。

でも、それだと落語家さんや、噺について調べながら書くことになるので、それよりも“熱量が伝わったほうがいいのかな”と思うようになったんです。それで「この前、これを見に行ったよ」とか、自分の中で熱量の高いことを書いたり、自分の身の回りの出来事に絡めたりするようになっていきました。

――たしかに、そのほうが南沢さんのファンにも落語の面白さがより伝わると思います。今回、それが本としてまとまったわけですが、読んでみてどう思われましたか?

南沢 やっぱり落語って面白いなと思いました。10年以上聴いてるけど、まだまだ知らない落語もいっぱいあるし、それこそ上方落語もここ数年で聴き始めたんですけど、もっと落語を聴きたいなって、自分の本を読んで思いました(笑)。

――南沢さんの文才もあって、落語に馴染みのない方でも「落語、聴いてみようかな」となる素晴らしい本だと思います。

南沢 「この噺、面白いよ!」とか薦めたいんですけど、あんまり筋を説明しすぎるのも……と思ったりして。その塩梅が難しかったですね。でも、落語って筋を知ってても面白いじゃないですか。本を読んだ方に、いかに落語を聴いてもらえるか、見に行ってもらえるか、というのを考えながら書きました。これを読んだだけで満足しないで、ぜひ寄席に足を運んでもらいたいですね。

――すでに落語家さん側の感覚ですね(笑)。ちょっと深読みしすぎかもしれないんですが、この本の序盤は恋愛をテーマにした噺について多く書かれていて、これは一人でも多くの人に読んでもらいたいから、入口にみんなが興味ありそうなことをまぶして、最終的に落語の話になる……みたいなことを考えて書いてるのかなと思ったんですが、いかがですか?

南沢 それは……じつはあります(笑)。でも、それは落語から学んでいることなんです。本題に入る前の「まくら」のように、身近な話から入って本題に入っていきたいなっていう意識で文章を書いてる、そのひとつだと思います。まずは、文章を読んでもらえなきゃ落語を知ってもらえないと思ったので、読んでもらいたくてキャッチーな話題から入るようにしましたね。

噺家さんには情景が全部見えている

――改めて、落語のどんなところが一番の魅力だと思いますか?

南沢 落語にはたくさんの魅力があって、私自身の時期によっても変わったりするんですが、今、魅力的だと思うのは、同じ噺でも、やる人によって解釈であるとか、見せたいところがそれぞれ違うことですね。あとは長く見てると、前座さんだった人が二ツ目に昇進されて、そして真打に、という過程を見れるところも魅力だと思います。

――噺家は現役が長いから一生推せますもんね。

南沢 そうなんですよ! それは長く見てきて、ようやく気づいた魅力ですね。あと、聴き始めの頃は独特のテンポ感が好きでした。リアルに芝居でやったら、あんなにテンポにはならない。ただ、落語ではそのテンポがおかしみを生んでいると思うんです。

それから、話芸だけで人物も情景も想像させて、なんでも成立させてしまうというのは芸の可能性を感じて面白いなって思います。魅力について話し始めると、止まらなくなりますね(笑)。

――(笑)。南沢さんの本を読んで、落語というのは総合芸術なんだなと改めて思いました。南沢さんが舞台の『ハムレット』に出演されたときに、観劇していた立川談春師匠が「あえてダメ出しをするなら、歩幅がオフィーリアじゃない」とおっしゃったというエピソードが印象的だったんです。落語って歩くわけじゃないですけど、所作とかも見られてるし、そういうところも含めて落語なんだなって思いました。

南沢 そうなんですよね。噺家さんって座布団に座ってるだけですけど、話すときに自分の頭の中に、それこそ歩幅だったりとか、どんな服を着てるとか、そういうのが全部見えて話してるからこそ伝わるんだ! ということに、談春師匠の言葉で気づきました。それからは“話されてる方の頭の中って、どうなってるんだろう”って思いながら、落語を聞いてます。

――今はどれくらいのペースで落語は見に行ってるんですか?

南沢 寄席は月に1回行けたらって感じで、あとはホールでやっている落語や独演会を調べて、月に数回ほど行くくらいですね。直接、足を運ぶのは月2~3回なんですけど、CDなどの音源もありますし、今はサブスクに入ってたりもするので、それで聴いたりはしてます。噺家さん自身がYouTubeにアップしてる映像を見たりもしています。

――寄席とホール落語会、どちらを薦めたいかと言われたらどちらでしょうか?

南沢 う~ん……そうですね……。落語を聴きに行ったことがない人に薦めるのは、寄席だと思います。あの空間をまず体験してもらいたいですし、一回の公演にいろんな方が出てくるので。それと、寄席のほうが気楽に聴けるというか。“どこで笑ってもいいんだよ”って雰囲気なんですよね。ホールだと、目当ての方がいて、“この人を見にきたぞ”って方が多いので、寄席とはちょっと空気が違いますよね。

でも、寄席は“休憩しに来たの?”みたいな人もいるじゃないですか。そのくらい気楽に入れる場所だと思うんです。近くを通りかかって入る人もいるし、始まってても途中から入れるし、終わってなくても出られるし。やっぱり、私は寄席の“あのリラックスしてる感じ”が好きなんです。