大学卒業後、大手企業に就職したのち、講師紹介サイト運営・講演依頼代理業務をする会社に転職し、会社員向けの講演会エージェントをしている土橋昇平氏。著名な講師たちの講演活動をサポートしながらも、自分自身も司会やMC・講師として壇上に立つなど、会社員としての枠を越えた活動をしている。

年末年始は自分自身を見つめ直すには絶好の機会。現在の仕事に悩む会社員だけでなく、自分の将来を考える10~20代の若者に向けて、自らを“実験台”と称して会社員のままで幸せになる道を探る土橋氏に、ニュースクランチ編集部がインタビューした。

▲土橋昇平【WANI BOOKS-NewsCrunch-Interview】

就職は自分の軸で決めたほうがいい

――世代によって捉え方も違うと思いますが、土橋さんは就職にどのようなイメージを持っていましたか?

土橋 僕が就職するときは「ようやく独り立ちできるんだ」という気持ちでした。実家が苦しい時期にも学費は親に出してもらっていたし、そこは自分が就職して働いて恩を返すことで、少しでも親孝行につながればいいなと思ってました。

――自分の夢を追いかける、というよりは、親孝行したいという気持ちが強かったんですね。

土橋 そうですね。当時の僕にとって「お金」が大きな指針でした。就職先を選ぶときも、給料が良いところを選んでましたね。でも、その会社でずっと働くっていうのは想像していなかったです。しっくりきたら続けていたんでしょうが、先のことはわからないじゃないですか。とりあえず給料が良くて、なおかつ自分が受かった会社に入った感じでした。

――今の就職は当時と違いがあると思いますか?

土橋 まず大前提として、その空気感って現在進行形で直面している人しかわからないとは思うんですけど、僕が就職した頃は“転職することが前提の就職”というのは、そこまでなかったと思います。対して今の時代は、永久就職するっていうよりかは、転職をする前提で仕事に就くという方が一定数いらっしゃるイメージですね。就職する側も、企業側も考えは変わっているんじゃないかと思います。

――土橋さんは、講演会のエージェントという会社員としての仕事をやりつつ、それに関連する別の仕事もされている。土橋さんのようなスタイルに近づくにはどうすればいいと思いますか?

土橋 就職するにあたって自己分析をしますよね。そういうのも必要だとは思うんですけど、その会社に入って仕事をしてみないと、本当のことはわからないと思うんです。今は転職時代ですし、入った会社は多数のなかの一つの縁だと思い、あとはいつでもやり直しが効くから、人生がすべて確定するわけではないと思って、気楽に臨むのがいいんじゃないでしょうか。

――就職が決まらなくて悩んだり、入ってから精神的にツラくなってしまったりした人には、気持ちが少し楽になる言葉ですね。

土橋 じつは、僕自身も大学にいた“意識高い系”の人たちについていけなかったタイプなんです。TOEICがどうだとか、インターンに行って多くの人と交流したとか、そういう話を聞いて不安になってました。でも今になって思うと、結局はそこまでストイックになれなかっただけなんですよね。だから、“人は人”って割り切って、自分が決めた軸を大切にすればいいと思います。

まあでも、結局、会社に入ってみると、仕事って人生の大半を占めるってところにぶち当たるわけですよ。営業での成績とかも頑張ってみたりはしたんですけど、やっぱり不安になるので、僕の場合は仕事の休憩時間にカフェで日記を書いてましたね。

――日記というのは、誰かと比べるという行為から離れ、相対的な評価じゃなくて自分と向き合うことができますよね。自分では気づけていなかった気持ちや、潜在的に考えていたことなどを洗い出してくれる。

土橋 本当にそうなんです。僕の意思決定の根本にあるのは日記だと思ってます。一社目を辞めたときも、なんとなくで続けていくっていう選択肢もあったと思うんですけど、日記を書いていたら自分と対話するわけで。そうすると、そこに居続ける理由がないことに気づくんですよね。かと言って、次に何をやればいいのかとかはわからないんですけど。でも、わかっていることは“とりあえず辞めなきゃいけない”ってことで、日記の後押しもあって決断しました。

今を肯定することができれば過去も肯定できる

――土橋さんの人生において一番の転機はなんですか?

土橋 それも日記を書き始めたことですね。就職の前日に書き始めたんですよ。基本的に何も続かなかったタイプなんですけど、日記だけは今でも続いてます。

――日によって文章量なども違う感じですか?

土橋 もちろん、たいした文章でもないですし。きれいな文章を書くとかではなく、バーッとアウトプットさせる感じです。Wordとかに書いたりはせず、手書きです。手書きだと、そのときの心境だったりが字に表れるんです。なので、必ずノートとペンです。

――ちなみに、日記を書き始めたきっかけは?

土橋 就職の内定が出て卒業するまでの期間に、若手会社員の先輩たちに「今が一番自由に時間を使える時期だよ」「就職したら時間がなくなるよ」と言われて、正直、未来に希望が持てなかったんです。昔は生き生きしていたような大学生でも、就職して仕事を始めたら、どんどん社会に染まって“熱さ”がなくなっていく、ということを実感してましたし。

そういうなかで、自分は今の気持ちを忘れたくないなって。それなら“そのときの気持ちを綴っていけば、大事なものを忘れずにいれるんじゃないか”と思って、日記を書き始めました。

――なるほど。初心を忘れないという考えからだったんですね。書いた日記は読み返したりはするんですか?

土橋 迷ってるときとか、不安になっているときは昔の日記を読み返して、“1年前と比べたら成長してるな”と自分を鼓舞したりしますね。

――これまでの人生で、やり直したいと思うタイミングってありましたか?

土橋 うーん……考えてみたんですけど、ないですね。僕の場合、全部を肯定していくって感じなんです。現状、すごく満足してるんですよ。それは、今を肯定することができれば、過去のこともすべて肯定されると思ってるからなんです。だから、現状に満足し続ければ、ずっとそうしていられるということですね。そうできるように意識してるところもあります。

――それでも落ち込んだりするときもありますよね?

土橋 もちろん。だから、そういうときこその日記なんです。とりあえず書けばいいと思うんですよ。仕事でムシャクシャしたりすることもあるじゃないですか。そういうときは、一度、立ち止まって日記タイムを作っています。でも、一日が終わって風呂上りに書きます、とかだったら僕は続かないと思うんですよ。移動中の電車だったり、時間調整のカフェとか、そういうときにやるのがオススメです。