「休暇中の行き先」でもマウンティング
イギリス人のマウンティングポイントに「休暇中の行き先」があります。たとえば、動物園に関する会話です。
「このまえロンドン動物園に行ったのよ。とてもよかったわ」
「ウチは先日の春休みにも動物園に出かけたのよ。子ども4人全員連れてって、おじいちゃんとおばあちゃんも一緒だったの」
「あーそうなんだ。ウチは子どもが生後3か月のときに出かけたわ。でも、そのあとにサファリパークに行ったのよね。サファリパークはプライベートのガイドをつけるサービスがあって、あれをやるとキリンが近くまで来てすごくいいのよ」
「でも、サファリパークはやっぱりイマイチよね。ウチはケニアに親戚がいるからケニアのサファリまで子ども全員連れていったんだけど、とにかく野生の動物が多いでしょ。だから子どもたちが飽きちゃったわ」
「そうなんだ。うちの子どもはサファリより、どちらかって言うと、もっとエキゾチックな動物が好きなのよね。だから去年は家族全員でガラパゴス諸島に行ってきたの。今、ちょうど理科の授業で食物連鎖とか草食動物と肉食動物の違いは何か、勉強しているでしょ。だから、クラスのなかでのプレゼンテーションにも、旅行に出かけたときの写真を使うことができて助かったわ。ガラパゴス諸島はホントにいいわよ」
このように、イギリスの成金の親たちが奏でる「仁義なきマウンティング合戦」はやむことがありません。こうした彼ら彼女らのマウンティングに対して、天誅を喰らわす強烈なコンテンツがあります。それは日本に関するもので、たとえば先の会話のときに誰かが、こう言ったとしましょう。
「この前の休みに、日本の親戚に会いに行ったのよ。日本ではポケモンセンターに出かけ、ゴジラが出てくる場所を何か所か回って、寺で瞑想をしたの。それから、田舎に足を延ばして田植えをやって、日本アルプスを歩いてきたの。歴史の勉強も踏まえて伊賀の里では忍者修行もしたのよ。それから箱根でボルケーノを見て、温泉にも浸かって。温泉には黒い卵があっておいしかったわ」
言葉のハードルがあり、日本に出かけたくても、それができないイギリス人は多いのです。文化的な深みがあり、いろいろな活動を短期間で集中して実行でき、全世界の若い人が注目している漫画やアニメの源流が日本には大量にあります。
お金がいくらあっても買えない体験やコンテンツが山のようにある。忍者という単語を出すだけで、大半の人は「もう勝てません」という感じになることからも、日本のコンテンツがいかに強力かがわかるでしょう。