団体の枠を超えて築いた大岩陵平との絆
今夏、NOAHの試合を休んで新日本プロレス真夏の最強決定戦『G1 CLIMAX』に出場した清宮海斗。残念ながら決勝トーナメント進出はならなかったが、公式戦での経験にプラスして大切なものを得た。大岩陵平というタッグ・パートナーである。
清宮は全公式戦終了後も最終戦までG1に出場し続け、2021年8月にデビューしたばかりの24歳の大岩陵平と4回タッグを組んだ。
8月6日大阪=Just 5 Guys(ジャスト5ガイズ)のSANADA&DOUKI、8月8日横浜=UNITED ENPIRE(ユナイテッド・エンパイア)のジェフ・コブ&グレート-O-カーン、8月9日浜松=TMDKのマイキー・ニコルス&藤田康生に3連敗を喫したものの、最終戦の8月13日両国の矢野通&オスカー・ロイベ戦ではダブル・タックル、ダブル・ドロップキックの合体技も炸裂させ、最後は清宮が変型シャイニング・ウィザードでロイベに快勝した。
そして試合後、清宮の「大岩選手、自分と一緒にNOAHでやってみませんか?」の誘いに大岩が「チャンスをくださって、ありがとうございます。自分も清宮さんと同じ気持ちです。よろしくお願いします」と答え、NOAHと新日本の両団体の協議の末、大岩の国内他団体武者修行……NOAH参戦が決定したのである。
「最初は全然勝てなくて結果が出ないところから、それでも常に“次の試合は絶対にやってやるんだ!”っていう陵平の強い気持ちを感じて、団体は関係なしにして、自分がNOAHに戻ったときに2人でやっていきたいなっていう気持ちになりました」と清宮は言う。
清宮&大岩の初陣は『N-1 VICTORY』優勝決定戦(潮崎豪vs拳王)が行われた9月3日のエディオンアリーナ大阪のセミファイナル。相手は7年9ヵ月ぶりに復活の小川良成&ザック・セイバーJr.という職人コンビだ。
小川は清宮の師匠的存在で、小川と組むザックはNOAHの留学生として11年に初来日。その後、NOAHのレギュラー外国人選手となり、小川と組んでGHCジュニア・ヘビー級タッグ王座に2度就いている。ザックがNOAHに参戦していたのは清宮がデビューする9日前の2015年11月30日までで、2017年3月から新日本に登場して今日に至っている。
この試合では清宮&大岩の初陣は当然として、小川と清宮の師弟対決も注目された。小川が新日本帰りの清宮について「すっごく良い選手になって帰ってきたよ。モノマネ、パクリ、コピー……すごくいいレスラーになったんじゃない? G1の結果を見ればわかる通り全然ダメ。試合がワンパターンで面白くない」と酷評していたからだ。
果たして試合は、小川&ザックが清宮&大岩を翻弄した。小川とザックのバリエーション豊かな腕攻めに清宮、NOAHマット初体験の大岩はキリキリ舞いさせられたのだ。
試合は完全に小川&ザックが支配したが、試合を逆転したのは清宮と大岩の若い爆発力。防戦一方だった清宮が、小川にカウンターのスタンディング式のシャイニング・ウィザードから正調シャイニング・ウィザード、カットに入るザックをダブル・ドロップキックで吹っ飛ばして分断すると、清宮は小川にダメ押しの変型シャイニング・ウィザード! 内容的には押されっ放しだったが、この試合は勝つことが重要だった。
「小川さんの言葉? 小川さんは自分にとってはイチからプロレスを教えてくださった人だし、いろんな意見はあると思うんですけど、ワンパターンと言われようと自分は貫き通そうと思っています。僕にしかできないオンリーワンって言われるぐらいまでにしていこうと。自分がこれから得ていくものを自分の色としてプラスしていけば、清宮海斗、NOAHを広めていけるんじゃないかと思っています。
誰かのマネをしてもしょうがないですし、自分で経験したことが一番自信を持ってできることなので、もちろん周りの言葉に耳を傾けることは必要だと思うんですけど、自分はNOAHという団体を明るく引っ張っていきたいんですよ」
G1の時点では、後輩にあたる大岩を「大岩選手」と呼び、敬語で話していた清宮だが、小川&ザックに攻め込まれる大岩に「陵平!」と下の名を呼び捨てにして檄を飛ばし、一方の大岩も「清宮さん」から「海斗さん!」に変わっていた。
「他団体の若い選手をNOAHに引っ張ってくるっていうのは初めてのことなので、最初は敬語だったし(苦笑)、壁もあったと思うんですけど、でも、お互いに目指しているところは一緒。ゴールは設定しないで2人で行けるところまで行こうと決めています。
周りはなんていうかわからないけど、陵平と上がっていくことがNOAHを広めることにもつながると思ってます」と、清宮は大岩とのタッグを一時的のものではなく、どこまでも可能性を求めていこうとしている。