片道40分の電車の中でネタを書いていた
――ここからは、近江路さんとラジオとの出合いを教えてください。どういった経緯でラジオを聴くようになったのでしょうか?
近江路:中学校1年生のとき、親と外食に行った帰りに、たまたま『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』が流れたんですよ。当時、トップリードさんが、『キングオブコント』で2回目の最下位になったときで。「めちゃくちゃ悪口言ってる!」「こんなこと言っていいんだ!?」と感銘を受けて、それからラジオを聴く生活に変わりました。
――投稿を始めたきっかけは?
近江路:高校2年のとき、有吉さんのラジオと、その流れで『アルコ&ピースのオールナイトニッポンシリーズ』、あとは、back numberさんが好きだったので、群馬県太田市のコミュニティFMでやっていた『back numberのpizza small world!!』(FMTARO)、『back numberのオールナイトニッポン』などを聴いていて、ハガキ職人さんたちが面白いし、いつか送ってみたいなと思っていました。
そんななかで、ふと、back numberのオールナイトニッポン(以下、ANN)のネタコーナーに送ったら、その日の一番良かったメールみたいなのに選ばれて、サイン入りのノベルティまでもらえて……「こんなことあるんだ!」と、そのままハマった感じです。
中学からは、地元の滋賀県から京都の学校に行っていたので、片道40分の電車の中で、ネタメールを書いていたこともありました。
――どんな番組にネタメールを送っていたんですか?
近江路:どんどん聴く番組も増えていって、送っていたのは『アルコ&ピース D.C.GARAGE』『うしろシティ 星のギガボディ』『ハライチのターン!』『山里亮太の不毛な議論』『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』『霜降り明星のオールナイトニッポン0(ZERO)』『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』『霜降り明星のだましうち!』『ダイアンのよなよな…』『ミルクボーイの煩悩の塊』『#むかいの喋り方』……。
どこかの番組でメインで読まれるとかではなく、満遍なくという感じですし、自分は「ハガキ職人です!」とは言えないレベルだと思います。あと、ネタで読まれていたと言うよりも、リアクションで読まれるほうが多かったですね。
――どのくらいのペースで送っていたんですか?
近江路:一番送っていた高3から大学1回生の時期は、 聴いている番組が10〜15番組、送れそうなコーナーに5通セットで送っていくみたいな。それだと週100とかになるんですかね。
――すごいですね(笑)。投稿したネタについて、パーソナリティーに言われてうれしかったことは?
近江路:いろいろありますけど、back numberのANNで「いつも聞いてる名前だよね」と初めて言われたこと。それと最終回に長文のコーナーで読んでくれて、120分のうち、自分のために2分くらい使ってくれたのは、良い思い出だし、頑張って良かったなと思いました。
――ネタメールを送るなかで、どんなこだわりがありましたか?
近江路:改行と句点をちゃんとする。「読みづらいな」と思ったものに関しては、1回立ち止まってみる、というのはやっていました。序盤で、自分のラジオネームも読みづらいと気づいて、ずっとかぎかっこで読みを書いていました。
面白い人がきちんと報われる世界を作りたい
――長らくラジオを聴いているなかで、一番心に残っている番組を教えてください。
近江路:アルピーさんのラジオシリーズですかね。アルピーのANNにはメールを送れていなくて、それは自分の中で後悔していることでもあるんですよ。あの番組は、地上波ラジオでしかできないことをやっていたイメージがあるんです。ある種、(ラジオのベーシックな)近況トークという「現実の話」じゃなくて、完全にフィクションで面白いことを生放送の「ラジオ」でやって、リスナーを巻き込む……という面白さに、自分の人生を狂わされたなと思います。
――たしかに! 私もリスナーでメールも送っていましたが、いい意味で狂わされた人は多いでしょうね(笑)。
近江路:自分が担当している『にぼしいわしのアクウカクウカン』は、亜空間をテーマにメールを送ってもらっていて、それを軸に膨らませていくんですが、完全に(アルピーANNの)影響を受けていますね。もちろん、“にぼしいわしさんだから”みたいな必然性は用意するんですけど、自分はそういうカタチが好きですね。
――最後に、今後のお仕事についての野望を聞かせください。
近江路:3つあって。1つは、芸人さんでも、バンドマンでも、インフルエンサーでもいいんですけど、ラジオをやりたい人が、“良いラジオ”を毎週できる環境を作りたいです。
芸人さんでも、更新が不定期だったり、音質がありえないぐらい悪かったり、構成が雑とかあるんですよ。そのあたりを、自分でもいいですし、誰かが入って、良いラジオにして、ちゃんとファンの人に届けるカタチにしたいです。
2つめは、ラジオにメールを送っている人で、作家志望なのにうまくいっていない人もいると思うんです。たまたま自分がこういう立ち位置に来られたんで、少しだけでも作家志望のハガキ職人の手助けができるようにしたいです。面白い人が、ちゃんと報われる世界にしたいんですよね。
最後に、自分の野望としては、ラジオも含めて、自分のやりたい仕事で生活できるようになりたいです。なので、何かお仕事があればご連絡ください(笑)。
(取材:浜瀬 将樹)
1999年滋賀県東近江市生まれ。京都大学経済学部在学中に、ネットラジオアプリGERAにて番組制作を担当。その後、社会人として働く傍ら、お笑い芸人・バンドマンなどのPodcast番組制作を手掛けている。X(旧Twitter):@oumizikaisoku
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