その子に合った相撲を教えるのが自分の仕事

――穏やかで心優しい親方ですが、怒ることはありますか?

浅香山親方:たまにありますよ。力士に関しては、あまり気が抜けるとケガしてしまうのでね。遊びに来ているんじゃない。相撲で強くなるために入っているんだから、そこを忘れさせちゃいけません。厳しいことを言われたり怒られたりするのは、どこの部屋も、どの世界も一緒。いずれは社会で経験することを、早いうちから経験するのはいいことだと思います。

▲一生懸命な弟子たちを優しく厳しく見守る

――元プロレスラーで明るく元気ハツラツなおかみさんも、部屋を支えてくれていますよね。

浅香山親方:普段の生活での、みんなの様子を気にして見てくれています。ちょっと様子が変だとか、体調がよくなさそうだとか、私だけでは気づかないことにも気づいて、声をかけてくれるんです。悩み相談なんかは、ほとんどおかみさん。男同士でできないコミュニケーションもあるので、違った目で見てくれて助かっていますよ。

――親方が相撲の指導において大切にしていることはなんですか?

浅香山親方:未経験者には、相撲の基礎から教えます。もちろん、前に押すのが基本ですが、その子にとって“どの形で押す”のが一番力を発揮できそうか、教えながら一緒に考えていくんです。上手を取ったら投げるんじゃなくて、そのまま前に出るとか、徹底的に押しながら、その子の型を模索していく。

自分が四つ相撲だからって、四つ相撲だけを教えるのではなくて、押し相撲も教えます。自分が四つ相撲だったからこそ、どう押されたらイヤかがわかるから教えられるんです。一人ひとりを見て、その子に合った相撲を教えるのが自分の仕事だと思います。

――稽古以外、例えば食事や体調管理に関する指導について教えてください。

浅香山親方:そんなに厳しくは言わないけど、食べるものには気をつけろと言います。昔に比べると稽古量がかなり減っていることもあるので、塩分の濃いものや甘いものを摂りすぎてはいけません。水分もしっかり取って、考えながら食事をすること。昼も夜もちゃんこをしっかり食べていれば、間食する必要もないはずなんですが、現代はコンビニもジャンクフードもいろいろあって、みんな言うこと聞かない(笑)。

ただ、内臓を壊したら力が出ません。健康にだけは気をつけてほしい。飲酒もそうです。我々、昔のお相撲さんは、たくさん飲んだし飲まされてきたけど、もし弟子に無理矢理飲ませようとしてくる人がいたら「いまは時代が違うのでやめてください」とお願いします。コンプライアンスの観点だけでなく、生活を乱すと病気になってしまいますからね。

――力士の皆さんは、親方にさまざまなことを教わっているだけでなく、大切に守られてもいるんですね。最後に、どんな子に浅香山部屋に入ってきてほしいですか?

浅香山親方:うちは未経験者がほとんどですから、相撲をやってみたいな、ちょっと興味があるな、そう思う子にはぜひ来てほしいですね。のんびりした性格の子が合っているかもしれませんが、やってみたいと言って来てくれる子は、いつでも歓迎します。まずは稽古見学に来てください。

▲温かく受け答えしてくださった浅香山親方

 ▲浅香山部屋ホームページ