見方を変えれば最大の土壇場さえもネタになる
長年番組に携わるなかで、遅刻をしてゲストを待たせたり、寝過ごしてドタキャンするなど、いくつものピンチがあった。それでも、人生最大の土壇場は競馬好きが高じて、大きな借金を抱えたときだと振り返る。結婚した現在は、収入の全てを奥さまがキッチリ管理し、現金は1円も持たされず必要最低限の電子マネーのみ所持する。
「借金して金が回らなくなって、水道、電気が止められる。自宅の電話も止められているから、借金取りの電話がニッポン放送にかかってくる。家賃を3か月滞納して、“今月払えないなら、出て行ってください”という通達が来て、有馬記念で稼がなきゃと思い、ボーナスと給料を全部賭けて、外して……。本当にピークでした。
次の給料日までどう生きていいかわからないし、家も出なきゃならない。今だから笑って話してますけど、当時は乗りこえようとか思っていないです。今日1日をどう乗り切るか、なんですよ。とりあえず、明日までのお金がまず必要。お金がないと、呼吸していないみたいに息が苦しいんです。
とにかく息継ぎしたい。誰でもいいからお金を借りられる目途がついた瞬間、水面に上がって、プハ~って息ができる感じで、あとはずっと潜っている。そんな感じでした。それも全部ネタにして、放送で喋っていましたけど(笑)」
2001年にラジオ『ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回』の3代目アシスタントに就任、しかし初仕事で遅刻し、あの和田アキ子を激怒させたのはもはや伝説だ。
「今でこそ長いお付き合いになりましたが、アッコさんには最初、まったく心を開いてもらえませんでした。でも、アッコさんと絡めているだけで幸せなんです。今、『5時に夢中!』の月曜コメンテーターで一緒のマツコ(・デラックス)さんもそう。僕なんかからしたら、芸能史に残るような人と一緒の番組をやれているっていうのは、それだけで貴重な経験です。
放送中、どんなに冷たくされても全く気にしないです。失敗して、落ち込んでも、いつも“死ぬわけじゃない”って思うんです。そう思って、これまでなんとかしのいできました。例え、失敗して全てを失っても、“東京に出てこられただけ、ラッキーじゃん”って、心のどこかにあるんです。
『5時に夢中!』のMCをやらせていただけたのは本当に感謝。もちろん終わりたくないですし、長くやりたいですから、プロデューサーやスタッフとのコミュニケーションは大事にしています。萎縮しても面白くないじゃないですか。自分のことを使ってくれた人に対しては恩返ししたいです」
人と比べて、強心臓なわけでもない。怖いものがないわけではない。全ては自分の考え方次第。だから、スヴェンソンで増髪していることも隠さずにカミングアウトするし、自宅では全裸で過ごすことに驚かれたら“それって変わっているんだ!”とエピソードにしている。
「心臓は全然強くないです。全部、モノの見方を変えているだけなんです。逆算して考えていけば、失敗も恥ずかしいこともあんまり怖くないし、変わっていると言われることも武器になりエピソードとして使えます。それは確実に自分の強みになるんです」
(取材:髙山 亜紀)