ヴァンフォーレ甲府のアジアの冒険

トーナメントを番狂わせで勝ち上がったチームが、さらなる格上と試合をするときに『近くて遠い』なんていう言葉で形容されることがままありますが、ヴァンフォーレ甲府の初めてのアジアの冒険は、言うならば『遠くて近い』と形容できるような敗戦で幕を閉じました。

2023-24シーズンのACLに、2022年天皇杯王者として臨んだヴァンフォーレ甲府は、大会規定でホームスタジアムのJITリサイクルインクスタジアム(通称:小瀬)を使用することができず、全てのホームゲームを国立競技場で開催することになりました。

僕も応援に行こうと意気込んでおりましたが、愛する浦和レッズの試合が開催されている時間に、他のチームを応援しようという気持ちにはなれず、先日の蔚山現代FCとのラウンド16で、初めて甲府の勇姿をスタンドから応援することができました。

アウェーでの1stレグを0-3で落とし、雨が降り、冷え込む18時の国立には、それでも多くのサポーターが詰めかけました。

〇【蔚山現代×ヴァンフォーレ甲府|ハイライト】AFCチャンピオンズリーグ23/24 ラウンド16 1stレグ

多くの甲府、そして他チームのサポーターが、自身の心のクラブのユニフォームを着て応援するなか、僕は友人の畑尾大翔のヴァンフォーレのユニフォームを着て観戦しようと実家に取りに帰るも、ユニフォームを紛失したことが発覚。かといって、レッズを着るのもなぁと思い、仕事終わりに私服で観戦。

▲どこかに紛失してしまった甲府のユニフォーム 写真:本人提供

僕の周りはいわゆる他サポが多く、落ち着いた雰囲気でしたが、他サポでもゴール裏で声を張り上げている人もおり、その楽しみ方はさまざまという感じ。「お子さんにどうぞ」と仕事先でもらったチカチカ光るおもちゃが、思いのほか役に立ちました。

▲子どものおもちゃが観戦グッズに 写真:本人提供

僕は静かに見ようと思っていましたが、試合の熱に当てられて黙って観戦などできないテンションに。とあるエリアで響いてた叫び声は、審判への異議以外はほぼ全部、僕です。

それほどまでに甲府の選手たちは素晴らしく、僕の心を打ちました。

立ち上がりから多くのシュートチャンスを作った甲府。ハイペースというよりも、オーバーペース気味にハイプレスをかけて、ピーター ウタカ選手を中心に点を取りに行きます。

逆に蔚山がプレスに来ても、それをいなせるエドゥアルド マンシャ選手や木村卓斗選手の上手さも流れを作るうえで欠かせない要素でした。(試合後に聞いたのですが、木村選手は新加入! 去年J3愛媛FCでプレーして、今年は初っ端いきなり蔚山相手!!? 横浜F・マリノスからレンタルだそうですが、すんごいいいボランチです!! 甲府は彼がいるうちにJ1にあがっちゃいたいだろうなぁ)

しかし、韓国王者・蔚山も、とにかく上手い。地味に上手い両サイドバックがプレスからボールを逃すと、華があって上手いトップ下の14番と右サイドの11番が攻撃を展開していきます。

1%の奇跡を起こすために

そして、プレスを剥がして右サイドを崩すとワンチャンスをモノにして蔚山先制……。開始早々に甲府は5点が必要な状況に追い込まれます。常識的に考えて、ここから逆転できる確率は1%以下でしょう。

それでも甲府の選手、そしてサポーターは気持ちが落ちることは一切ありませんでした。なおも激しく攻め立て多くのチャンスを作ります。

逆にいえば、チャンスのどれか1つでも前半で決めていれば、1%以下の奇跡を起こせたかも。それほど甲府のフットボールは素晴らしかった。

34番の木村選手は、相手の逆をつくスキルと細かなボールタッチで次々と中盤を打開。前半の段階で僕の今季J2再注目選手が決まってしまいました。好きです。

相手14番も抜群のスキルで大活躍していたので、ここのマッチアップは見応え十分。この試合の活躍でこれ以上を求めるのが酷な話ですが、14番を抑える力強さが加わったら、それはもう日本代表なんだろうな、と思うほど小気味良いゲームメイクでした。

サイドでは上手いけど守備がルーズな相手の11番とマッチアップした甲府アカデミー出身の小林岩魚選手が、何度となく攻め上がりクロスを入れます。