芸人で憧れていたのはトータルテンボス

――すぐる画伯のパーソナルな部分も聞きたいのですが、そもそも芸人になろうと思ったのはどういうきっかけだったんですか?

すぐる画伯:今、僕は31歳なんですけど、小学生の頃からNHKでやっていた『爆笑オンエアバトル』が大好きだったんです。中学生の頃、初めて番組観覧に行ったんですけど「テレビセットって実際はこんなに小さいんだ! でも、こんなに臨場感があるんだ!」「家で見てても面白いのに、生で見るとこんなに面白いんだ!」と感動して、これまでのどんなイベントよりも、初めて生でオンエアバトルを見たことが楽しかったんです。

そして、“明日も頑張ろう”と思えたんですよね。人が立って喋っている、その姿を見ただけで、そう思えている自分がいるって冷静に考えてすごいな! と。そこで、自分も人に元気を与えられる職業に就きたいと思ったことが、芸人を志したきっかけでした。

お笑い芸人を目指した理由がそれなので、漫才にこだわりはなかったんです。僕の場合、漫才やネタではなく絵で人に元気を与えられるのなら、そっちをやりたいなって。SNSで絵をアップすると「明日も頑張れます!」とコメントがくることがありますが、「当時の夢、叶ってるじゃん!」としみじみしてます。

――でも、新卒では市役所に入ったそうですが、芸人にはずっとなりたかったわけですよね。

すぐる画伯:公務員試験を受けているときの気持ちは真剣でしたが、いつまでもお笑いへの気持ちは消えませんでした。公務員の仕事がイヤだったわけではなく、お笑いがやりたすぎたんです。1年で辞めることを決めてからは、ここでの経験をモノにしようという気持ちで働いたので、仕事は楽しかったです。社会人として大事なことを吸収できた期間だったと思います。

――ちなみに、お笑いで一番影響を受けた方は誰ですか?

すぐる画伯:たくさんいらっしゃいますが、一番影響を受けたのは、トータルテンボスさんですね。ラジオ番組の『トータルテンボスのぬきさしならナイト!』にも、よくメールを送っていましたし、楽しそうなお二人が大好きだったんです。

初めてお会いしたとき、僕が出した1冊目の本『1秒できゅんとする! ほのぼのザわーるど』をお渡しさせていただいて、ずっと憧れていたことをお伝えしたんです……が、僕の本を読んで、大村さんも藤田さんも「え、俺らのどこに憧れてたの? キュンとかほのぼのとか……真逆じゃん!」とツッコまれました(笑)。

日常に落ちている小さなきっかけに気づけるか

――先ほど、「サシ似顔絵」〔※すぐる画伯がお客さんと1対1で話しながら似顔絵を描くイベント〕の様子を見させてもらいましたが、お客さんと話ながらスラスラと描いていて驚きました。

すぐる画伯:描くのは早いと思います。

――会話をしながらイラストを描くという作業を同時にやって、しかも早いのがすごいと思いました。

すぐる画伯:うれしいです。7年間、毎日イラストを描いているので、 目をつぶっていてもわかるくらいiPadの操作に慣れているんですよね。あと、僕は目の前の方と喋りながらも、俯瞰で出来上がりの絵を見ているイメージで描いています。色を少し調整しようと絵に集中することはあるけど、そのときでも耳の意識はお客さんに向いている感じで。iPadと友達になれたからこそできることですね。

絵を描いている時間がめちゃくちゃ楽しいですね。なんなら、ずっと描いていたいですもん。案が生まれてくる瞬間が、まず一番気持ちいいんですよ。“これを描いたら絶対に可愛いじゃん!”って。そこから、実際に描いてみて「うわ、可愛い!」となる瞬間もうれしい。

――まさに天職ですね。イラスト集『1日1ページで癒される 366日、やぁねこといっしょ』(ヨシモトブックス)では、7月10日のサブスクのページがすごく好きでした! ただただ可愛いページとは、一味違いますよね。

▲『1日1ページで癒される 366日、やぁねこといっしょ』より

すぐる画伯:可愛いで成立するページもあるし、芸人脳で作るネタのページもあります。どっちの視点からも楽しんでいただけるのが理想ですね。

――こういうイラストのアイデアを得るために、普段から意識してることはありますか?

すぐる画伯:芸人さんのネタを見ていてよく感じるのは、“よく思いつくな、このネタ! 俺が思いつきたかったわ”ということ。でも、そう感じたネタを紐解くと、きっかけは些細なとこから生まれていることも多い。なので、日常に落ちているきっかけに気づけるように、意識的に物事を観察して、一日を終えるときにはアイデアのストックができるようにしています。

例えば、5月24日のカメが甲羅をリュックみたいに前で背負うページは、亀から思いついたわけではないんです。電車に乗っているときに、僕がリュックを前に背負っていることを俯瞰して、“これってみんなやることだし、優しいよな”と気づいたんです。

絶対ありえないキャラにやらせたいなと思って、このネタが出来上がりました。だから、大事なのは“自分やみんなが当たり前にやることのなかにあるきっかけ”に気づくことだと思いますね。

▲『1日1ページで癒される 366日、やぁねこといっしょ』より