“害”はいいとしても“老”はイヤ
――敗者復活での進出も含め、決勝を2度経験した今もなおM-1に参加し続けてます。今、M-1に対してはどのようなモチベーションなのでしょうか?
昴生:“世代が変わったな”っていうのは、ほんまに思います。3年ぐらい前の3回戦の会場なんて、全員知らん芸人ばっかやって、そのときに“これはやばいな”と思いました。“出てる側を僕が知らんってことは、これ絶対、僕らがいつもやってるお客さんじゃないわ”って。特に今なんて、そこから輪をかけて、さらにわからんようになってきて。
亜生:いやでも、お兄ちゃんに至っては、特に知らんスピードが速いんですよ。“史上最年少老害”なんで。
――そんなことはないと思いますよ(笑)。
亜生:“最年少老害”はニッポンの社長の辻さんから言われているんですけど、お兄ちゃん、すぐに師匠感を出すんです。若手の楽屋で「挨拶が弱い!」とか「ちゃんと漫才主軸にやってんのか?」とか(笑)。
昴生:ええやん、ちゃんとそういうの言ってかな。あと、最悪、老害の“害”はええねん。“老”がホンマにイヤや。僕、まだ40手前やで?
亜生:(笑)。
昴生:まあ、でも知らない人が多いのはほんまですね。あまり劇場で一緒になる機会もないので、今はM-1の予選前にYouTubeでチェックするようにしてます。どんな人らがいるんやろうって。
――気になる方はいましたか?
昴生:ミカボが面白いなあと思いましたね。いい感じで尖っているようにも見えて、ええなあって。
亜生:僕は皆さん言ってるでしょうけど、エバース。あとは吉本じゃないけど、TCクラクションさんは面白いなあと思いました。
僕らの最大の目的は上方漫才大賞
――世代の変化を感じるなかで、戦略的に変更されたことはあるのでしょうか?
昴生:んー……ぶっちゃけて言うと、僕らに“M-1=戦う”っていう感覚はもうないんですよ。全国ツアーをやって、応援してくれる人たちにたくさん会ったことで、その人たちが「M-1で見たい」と言ってくれはるから、その期待に応えたいなって。
もちろん、出るからには一生懸命やってますよ。でも、自分らがあかんかって落ち込むというより、「ああ、ファンの方々の期待に応えられんかったか……」が毎年続いている感覚なんです。日々の漫才とか、ミキ漫の延長線上にM-1があるというだけ。
亜生:僕もそうですね。僕の場合は、とにかく楽しくやりたいという気持ちが強いです。
昴生:せやから、M-1にとって邪魔やろうなとは思うんですよ。僕らみたいな存在って。
――え! どうしてですか?
昴生:だって、テレビにも出てるし、決勝も何度か出てるし、“これがきっかけで売れたい! と思っている人の枠を潰すなや”と思う人もおるんやろうなって。でも、僕らとしては漫才の最大のコンテンツであるM-1で、ずっと受け継がれてきたしゃべくりの漫才を見せたいんですよ。M-1優勝はもちろん目標ではありますけど「こういう漫才もまだ終わってないぞ!」というのを見てほしい。
亜生:M-1で優勝したら、漫才師としての空気感が変わると思うので、そういう意味では勝ちたいんですけどね。ミルクボーイさんも銀シャリさんも、優勝してさらに漫才してるのが楽しそうですもん。羨ましいなって。あと、きっと優勝したら新しくお客さんも入ってくるでしょうしね。
昴生:それはそうやな。M-1優勝っていう看板は、まあでかい!
亜生:全然違うアドバンテージを持てると思ってます。これまでよりも漫才が楽しくなりそうだなって。
昴生:M-1で優勝したら、上方漫才大賞も近づきますからね。僕らの最大の目的は、上方漫才大賞なんで。新人賞、奨励賞はいただいたので、あとは大賞だけなんです。獲ったら、一丁上がりやなと思います。
亜生:なかなか高い壁ですし、全然振り向いてくれへんけど。そういうのもあって、しっかりと漫才をやっていきたいですね。