1人よりも2人いたほうがいい理由

そうやって桜井さんが「戦力」になってくれたおかげで、弊社が請け負える仕事量が激増したし、単に2倍どころじゃない効果だ。

「1人よりも2人いたほうがいい理由」はこんな感じ。

〈1〉会話ができる

「これどう思う?」
「面白いと思います」

このラリーがあるだけで、既に答えが決まっていることでも前に進めやすくなる。背中を押されて勢いがつくイメージ。ChatGPTと会話するほうが正確かもしれないが、生身の人間と話すほうが温度があってよい。

〈2〉選んでもらえる

エンタメの仕事は特に「好み」の選択を迫られることが多い。どっちでもいい選択だとしとても「1票」と「2票」は大きな違いだ。

〈3〉弱点を補ってくれる

桜井さんは明らかに僕ができない気配りができる。「今日は〇〇しゃんの誕生日でしゅ」「〇〇しゃんがラジオで高橋しゃんのことをしゃべっていましゅ」など教えてくれて、気の利かない僕は大変助かっている。

〈4〉自分にない選択肢を提示してくれる

stand.fmというラジオアプリの会社から「何か新番組を作ってもらいたい」というオファーがあり、桜井さんに相談したところ「絶対に板橋ハウシュで番組をやるべきでしゅ」と珍しく猛烈に主張してきたことがあった。

板橋ハウシュ(正しくは板橋ハウス)とは、板橋でルームシェアをしている吉本興業の芸人さん3人組のことで、僕は正直あまり詳しくなかったのだが、桜井さんの言うとおり半信半疑で「板橋ハウスのラジオディア」という番組を始めることにした。

それが大盛況で、いまでは1000人キャパの番組イベントを開催するまでに成長した。桜井さんがいなかったら、この番組は実現していないので、紛れもなく桜井さんのおかげである。自分の中にない選択肢を提案してくるのは大変ありがたい。

それにランチで「オムライスの店」も桜井さんが提案してこなかったら絶対に行かないので、食事のレパートリーも増えて楽しい。

〈5〉社長をラスボスにできる

様々な事情で断る方向に持っていきたい仕事や、交渉が必要な案件など、いきなり僕がやるより「1クッション」必要な瞬間が多々ある。桜井さんには嫌われ役になってもらうこともあるが、会社としてはとても大切なことだ。

いったん桜井さんが対応して、そのあと僕が登場するほうが、なんだか「ラスボス感」が出て交渉を優位に進められるのだ。何かミスが起きたときも、桜井さんがいったん謝って、そのあと改めて僕が謝ったりすると「大げさ」にできる(チートみたいで良くないが……)。

RPGでも、いきなりラスボスは格好がつかないので、弊社にも桜井さんという中ボスが必要なのだ。

〈6〉個人ではなく会社として見てもらえる

僕だけのときは、依頼される仕事が「この番組のプロデューサーをしてほしい」のような「個人」の依頼だけだったのが、2人になって「この番組を制作してほしい」というまるっと一括での依頼が増えた。

個人ではなく会社として見てもらう、これがかなり会社の成長に重要だと思った。やりとりするお金の額もグンと上がった。組織に属しているのがイヤで会社を辞めたのに、結局やりたいことをたくさんするためには、組織を作っていかなきゃいけないという皮肉……これはきっと避けて通れない。

弊社の目標は「桜井さんがニコニコ仕事をすること」

他にも挙げればキリがないのだが、ヒリヒリする打合せや、大きなイベントなど、もちろん大勢の人の支えもありつつ、コアメンバーの2人で励まし合いながら乗り越えてきた。

別に多数決じゃないけど「常に味方が1人いる状態」で戦えていること、そして様々な苦労を間近で見てもらっていることは大変心強い。1人ぼっちだったら、今ここまで真っ当に仕事ができていない気がする。「1人より2人がいい」だなんて、書けば書くほど人間として当たり前のことを言っているが、だって本当にそうなんだもの。

2024年4月、大学を卒業した桜井さんを正社員として雇用した。基本給を決めて所得税を計算して雇用保険を払って給与明細を作って、晴れて桜井さんが正式に弊社の社員となった。

▲大学卒業時の桜井さんのショット。TPは少し泣いたらしい

社員を雇うというのは、毎月固定の支出が確定するということだし、その人の人生も背負うことになるので、とても大変なことだ。

僕は数々の困難を一緒に乗り越えてきた桜井さんの人生を背負う覚悟で今後もやっていく。目の前でジュースを飲んでいた話し相手は、気づけば背中に乗っていた。桜井さんに「聞いてた話と違いましゅ」と言われるかもしれない。ごめんね、これからもよろしく。

弊社の目標は「桜井さんがニコニコ仕事をすること」だ。

桜井さんの笑顔を守るべく今日もがんばって働きます。会社の近況を報告する「TPと桜井の頑張れラジオ」というラジオ番組をstand.fmで配信中なので、そちらもぜひお聴きください。

次回の『TP社長日記』は、8月8日(木)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
高橋 雄作(たかはし・ゆうさく)
株式会社TPコーポレーション東京X代表取締役。東京都出身。1987年9月27日生。早稲田大学政治経済学部卒。テレビ朝日に新卒で入社し「Qさま!!」「お願いランキング!」「もういっちょシリーズ(金属バット・蛙亭・ランジャタイほか)」などを担当、PやDを務める。2022年8月に独立し会社設立。YouTubeチャンネル「金属バット無問題」を手掛ける他、音声アプリ「stand.fm」コンテンツアドバイザー、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフP、ライブ配信サービス「SHOWROOM」コンテンツDも務める。高橋プロデューサー略して「TP」と呼ばれている。お笑いと北海道日本ハムファイターズとフライドポテトと柿の種が大好き。Twitter:@takahashigohan、オフィシャルサイト:株式会社TPコーポレーション東京X