地方クラブにはロマンがある
今日のテーマは開幕戦で感じた地方クラブロマンです。イプスウィッチは70年代から80年代に黄金期を迎え、UEFAカップ(現・ヨーロッパリーグ)も制したことがある古豪だそうですが、2002年を最後にプレミアリーグから遠ざかっているそうで僕も初見のチームでした。
これも開幕戦であるリヴァプール戦で実況の安井成行さんがおっしゃっていたのを聞いて知りました。
イングランド東部のサフォーク州で最大の都市だというイプスウィッチは検索すると歴史を感じるブリティッシュな建造物の数々、夜景が綺麗なウォーターフロントがあるなど、とても美しい街。
そんな街のチームが3部リーグでプレーしていた3年前、マンチェスター・ユナイテッドでコーチを務めていたマッケナ氏を監督に招聘すると、翌シーズンに2部に昇格、さらにその翌シーズンには1部まで駆け上がる快進撃を成し遂げたチームです。
だからこそ、チームには3部時代からプレーしていた選手が多く在籍。そして今シーズンの開幕戦はリヴァプール、そして第2節の相手はマンチェスター・シティです。
特にホーム・ポートマンロードスタジアムで開催されたリヴァプール戦は
「この前まで3部で戦っていた俺たちの街のチームが、どこかの資産家に買収されたわけでもなく、そのメンバーで本気のリヴァプールに挑む!!」
というサポーターの熱狂をテレビ越しで感じるものでした。サポーター冥利に尽きますね。昨年、ヴェルディが16年ぶりにJ1に昇格した瞬間を目の当たりにした僕は、22年ぶりの1部でリヴァプールと戦えるサポーターに感情移入してしまいます。自分の街のクラブなら入場アンセムが流れただけで泣いてしまうでしょう。
さらにこの試合でロマンを感じたのがイプスウィッチの戦い方。世界屈指の強豪相手に真っ向勝負で挑んだのです。
自陣ゴール目の前からのリスクを負ったパスでの組み立ても、前からのハードすぎるプレスも自分たちの積み上げたものを思いっきりぶつけるような戦い。それは時に通用し、スタジアムをとんでもない熱狂に巻き込みました。イプスウィッチの大ファンであるエド・シーランも大興奮してました。
そして、その上をいくリヴァプールのプレスやパス技術にも
「おいおい! 2部でこれを打開するチームなんてなかったぜ!! リヴァプール強ぇ!!」
と、スタジアム中がワクワクしてるようでした。
このワクワクには覚えがあります。僕も後にプロになるような選手と対戦すると、恐怖とともに、そのレベルの相手と90分だけは真っ向から戦える楽しさにゾワゾワというかゾクゾクというか血が湧き上がるような興奮を記憶があります。
そんな興奮がスタジアムを包んだ前半が終わると、観客は総立ち。スタンディングオベーションで選手たちを迎えました。
……これだよ。これこそフットボールだよ。ピッチ上の選手に能力値をつけたら12番目から22番目の選手しかいなくても1〜11番目の選手と戦える。そしてその勝利を本気で信じる。最高じゃないですか。
結果的に後半、リヴァプールは采配の妙でイプスウィッチより優位に立つと、右サイドバックのアレクサンダー・アーノルドが躍動。
トップ下とかFWの選手ならともかくサイドバックに「前を向かせたらやられる!」という選手がいるという異次元ぶりを見せつけ、体力的にも苦しくなったイプスウィッチを2-0で倒す結果に。
〇【ショートハイライト|イプスウィッチ v リヴァプール】プレミアリーグ第1節
また2節でイプスウィッチはシティ相手に先制してアウェーまでやってきたサポーターに熱狂をもたらしますが、そこからはシティに全てで上をいかれて完敗。
しかし、これより上はほとんどいないというレベルを体感して、ここからどうなっていくのか、BIG6や日本人選手だけでなくイプスウィッチも追いかけざるを得ません!!
そしてイプスウィッチのメンバーの中に1人だけ知っている選手がいました。ロングスローの名手として一世を風靡したデラップ……ではなくカルヴィン・フィリップスです!(イプスウィッチのデラップは僕が知ってるロングスローのデラップの息子でした)
カルヴィンはシティ在籍時にジャパンツアーで国立競技場に来たのですが、相手の横浜F・マリノスの選手にも一人ひとり握手をしに行き、両チームの選手が交流するきっかけを作るだけでなく、ピッチレポーターをしていた我々にも握手と挨拶をしに来てくれた超ナイスガイです。大好き!! プレーヤーとしてもゲームメイクが巧みなので、今後チームの鍵になるはず! 期待しかありません!
街やスタジアムも是非行ってみたいなぁ。フットボールは、観客が作る雰囲気も含めて、ロマンです!!