雨のゴール裏で思い起こされる試合
先日、国立競技場にFC町田ゼルビア対浦和レッズを観戦しに行ってきました。
家族ができてからは、レッズの試合は家族と行くことが多いのですが、この日は雨ということで1人観戦。なので、久しぶりにゴール裏に行ってきました!! おそらくコロナ禍以降では初めてなのですが、やっぱりいいですね、ゴール裏は。
雨のゴール裏というと思い出す試合があります。それは、2012年の埼玉スタジアム2002での川崎フロンターレ戦。あの日も雨が強く、公式記録を見ると気温も10℃とのこと。ただ、雨に濡れているはずなのに不思議と寒かったという記憶が全くないのです。
この試合、先制した浦和ですが、59分にフロンターレの矢島卓郎選手のゴールで追いつかれると、そこからが凄まじい展開でした。
71分にイエローカードをもらっていたチームの要の阿部勇樹選手が、74分にも立て続けにイエローカードをもらい、退場。さらに直後の80分、今度は槙野智章選手が2枚目のイエローカードで退場したのです。
阿部選手の退場は、タックルの瞬間に「あ、これ退場だ……」と全員が悟るやつでしたが、槙野選手のプレーはちと厳しい判定。相手のレナト選手のマリーシアにしてやられたという感じ。
しかし、これで完全に埼スタに火がつきます。フロンターレ相手に9人の浦和は、GKの加藤順大選手を中心に必死の守備。それを支えるようにゴール裏のサポーターも、一人ひとりが体内の気体を全部出さんばかりの勢いで声を出し続けました。
気温10℃の強雨。正直、僕の観戦人生でサポーターに一体感が一番あったのは、あの日のゴール裏だったのではないか、と今も色濃く覚えています。内容というよりも、とにかく僕も周りも必死で声を出した。試合中にブーイングや野次を飛ばす人が、ゴール裏に一人もいないくらい必死の「WE ARE REDS!!」
そして試合をなんとか1-1のまま終えると、翌日の新聞には相手選手の
「レッズサポーターの声が大きすぎて、ベンチからの指示が一つも聞こえなかった」
というコメントが載っていて、
「やっぱりあれくらいの声を出したら、ピッチ上にも直接的に影響を与えられるんだ」
と、選手と闘えたことをすごくうれしく思ったんです。
後に矢島卓郎さんと加藤順大さんとは知り合って仲良くなり、お二人にこの試合のことを覚えてるか聞いたことがあります。
矢島「覚えてるよ! 俺点取ったやんな! それだけ覚えてる!!」
加藤「覚えてるよ!! 俺止めまくったやつでしょ!! それだけ覚えてる!!」
と、自分のことしか覚えてなかったけど、記憶に残っていてうれしかったんです。
よく考えたら、僕も声を出すことに必死で、ヤジさんが決めたこともノブさんが止めたこともほとんど覚えてない……(苦笑)。あとで調べ直して知ったくらいです。
さて、そんな思い出があったので、今回も熱くなれるだろうと乗り込んだゴール裏。しかし、新国立は全く濡れない。いいことだけど、なんか少し思っていたのと違う感(いや、絶対濡れないほうがいいだろ)。
しかし、試合はシチュエーションも激アツ。首位を走る町田に対し、浦和は夏に主力が移籍などで大幅離脱、そして直前に監督が交代、と「俺たちが支えねば!!」という使命感に駆られます。この使命感が、リーグタイトルも難しくなって雨だけど、行こうと思った一番の理由ですね。
試合を見ていて心を打ったのは、浦和の左サイドハーフでスタメン出場した関根貴大選手のプレーでした。ユース出身の生え抜き、2014年にデビューした選手です。18歳のルーキーイヤーから、キレキレのドリブルでレギュラーを獲得すると、2017年の埼スタで行われた広島戦では、3-3のアディショナルタイムに6人抜き独走ゴールを記録。
「え? 7月の猛暑よ。スタメンで出て、この時間にこのプレー!?」
と原口元気選手の次に浦和からW杯に出場するのは、この選手だな! と夢があふれる存在でした。
〇【公式】ゴール動画:関根 貴大(浦和)90+2分 浦和レッズvsサンフレッチェ広島 明治安田生命J1リーグ 第17節 2017/7/1
そんな関根選手、この日のタスクは相手の右サイドバック、大卒ルーキーの望月ヘンリー海輝選手を抑えること。
望月選手の年齢の頃は、「世界に羽ばたくんだろう」とみんなが期待していた関根選手が、まだベテランと言われる年齢になったわけでもないのに、代表初選出を果たしたルーキーに泥臭く、何度も転がりながら食らいつくのです。
本人だって若い頃に描いた青写真とは違った未来のはずです。