国家の命運を外国に委ねるな! 独立国としての「フリーダム(freedom)」を、外国と官僚に依存した戦後体制によって奪われている日本。国際情勢や国内の諸問題を通じて、真の「フリーダム(freedom)」とは何か? 『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)で第1回日本再興大賞を受賞、第20回正論新風賞を受賞した江崎道朗氏が日本再建の道はどこにあるのかを示す!
軽視されている自衛官の生命
災害救助や国連平和維持活動だけでなく、朝鮮半島有事、尖閣諸島への中国軍機や軍艦による侵犯対応などで、自衛隊の出番は急激に増えてきています。
自衛隊は世界一強い軍隊だと信じ込んでいる人も多いようですが、実態は異なります。
確かに自衛官は世界的に見ても、極めて優秀だと思います。
しかし、憲法9条の制約と予算不足、そして長年、米軍の補完勢力として位置づけられていたこともあって普通の国家の「軍隊」とは程遠いのです。
米軍の補完勢力として位置づけられているというのは、これまで日米同盟では「矛(攻撃)は米軍、盾(防御)は自衛隊」という役割分担がなされていて、日本は、相手国を攻撃する軍事力を保有していない、極めて歪な「軍隊」なのです。
しかも、防衛予算は国内総生産(GDP)の1%にするという自主規制をしているため、そもそも予算が圧倒的に足りないのです。
そんな自衛隊の正な実態を分かりやすく描いた連載が「日刊SPA!」で行なわれていました。題して「何もかもが足らない! ボンビー自衛隊の実態!」だ。著者の小笠原理恵さんは連載第一回の冒頭でこう指摘します。
《2017年度予算案の防衛費は過去最大の5兆1000億円前後となる予定で、華々しい自衛隊の正面装備の数々が並び、自衛隊は世界第4位の軍事力と言われています。迫りくる日本周辺国の脅威に備えながら、北アフリカ・アデン湾の海賊対処や南スーダンへの派遣、東京オリンピックでのテロ対応のために最新鋭の装備を備えています。警戒監視やスクランブル対応のために最新鋭戦闘機のライセンス生産の契約もとりつけました。艦艇は大型化し、潜水艦は増え、離島防衛のための戦闘機、水陸両用車やオスプレイの導入、サイバーテロ対策や災害派遣、救助装備なども充実してきています。
しかし、装備が増えたにもかかわらず、自衛隊の人員や整備や消耗品関係の予算はほとんど増えていません。大型化すれば燃料費や必要な乗組員数も増え、最新装備を導入すれば新たにそれらを運用する人員もプラスで必要となるはずです。PKFやテロ対策、災害派遣など対応すべき任務は増えているのに、実質的な人員も予算も増えていません。やるべき仕事が増え、装備品が大型化し、新装備を導入すれば、整備や補給、輸送など兵站にかかる費用は増えるはずなのに不思議ですよね。
つまり自衛隊は装備品では一流ですが、兵站を極端に削ってGDP1%程度に抑えているいびつな軍隊なのです》(平成28年12月22日付「日刊SPA!」)
東日本大震災のとき、航空自衛隊のヘリなどが被災者の救助のために十分に活躍できなかったのは、飛行場がダメになったこともありますが、何よりも燃料の備蓄が少なく十分に動けなかったという話を聞いたこともあります。
しかも防衛費不足は、自衛官の命を脅かす事態を生んでいるといいます。小笠原さんはこう指摘しています。
《いくら自衛隊が貧乏だからといっても、国のために働く自衛官へのリスクを無視しすぎています。平成28年度 防衛省行政事業レビュー外部有識者会合で、個人携行救急品を全隊員分確保した場合、約13億円が必要だから、限られた予算での確保は現実的ではないと隊員の命をバッサリと切り捨てています。その自衛官をつかって災害時に国民の救難を行うのはなんというブラックジョークなのでしょうか》
私も知人の米軍関係者から、自衛隊の医療キットのレベルは、米軍の軍用犬、つまり犬以下だと聞いています。
さすがにこれはまずいということで、安倍政権は平成27年4月22日、防衛省の中に「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会」を設置し、自衛官の緊急救命体制について検討を開始しましたが、これも結局は予算の問題に行きつきます。
※本記事は、江崎道朗:著『フリーダム 国家の命運を外国に委ねるな』(展転社刊)より、一部を抜粋編集したものです。