同期のエリート選手との1対1で得た手応え
すがや:実際に明治大学へ入学し、サッカー部へ入ってみて、感触はどうでしたか?
中村:正直、“やっていけるな”って思ったんです。そう思えた出来事があって、同学年の(常盤)亨太と1対1をやったんです。FC東京の下部組織にいたエリート中のエリート……関東でサッカーをやっていて、知らない人はいないくらいの選手。そんな亨太を完璧に抜くことができて、その瞬間に“俺、エリートを抜けた! やれる、やっていける!”って手応えを感じたのを覚えています。
すがや:ファン心をくすぐる良いエピソード、いただきました!(笑) そこから自信を深めて、どんどん成長していったんですね。4年生になってキャプテンに就任。キャプテンとエース、2つの重責を担うことになりましたが、どうでしたか?
中村:(重責が)ありすぎて、逆に感じなくなっているというか(苦笑)。10番っていう背番号は、やっぱりエースがつける番号。素晴らしい先輩方がつけてきた番号なので、自分もそれに見合ったプレーをしないといけないし、それ以上のプレーをしないといけないっていう責任感もありました。多くを話すタイプではないので、プレーで、背中で見せ続けることで、明治を体現してチームを引っ張っていけたらと思っていました。
またキャプテンとしては、「自分なりのキャプテン」というのを探しながら、日々過ごしています。キャプテンという立場はほぼ初めてで、試行錯誤の連続ですね。グラウンドでのこと、寮でのことなど、副キャプテンの(上林)豪と亨太、寮長の(木内)達也、主務のふじ(藤本颯真)たちと一緒に助け合いながらやってきました。
すがや:大学サッカーは、高校サッカーと比べてどこが一番違いますか。
中村:強度とスピード感です。高校3年生の時に、明治大学体育会サッカー部のセレクションがあって参加したんです。火曜日と水曜日の練習参加だったんですけど、明治は水曜日が過負荷トレーニングの日。そこで、人生で初めて練習で気持ち悪くなってしまって。前橋育英も強度高くやっていたので、ショックでしたね。
すがや:そんなキツいトレーニングに参加しても、明治大学に入りたいという意志はブレなかったですか?
中村:より一層、“ここに入りたい!”と思いました。これまでやってきたサッカーとはまったく違って、“キツいけど、絶対に成長できる”って感じたんです!……正直、“入ったら毎週、この過負荷トレーニングがあるのか”と、ちょっとだけ思いましたけど(笑)。
明治大学は人間性も高められる環境
すがや:そりゃ、ちょっとは思うよね(笑)。大学サッカーを通して、成長したことはなんですか?
中村:まず、サッカー面では、個人能力はすごく上がったと思います。一番変わったのは、守備の価値観。高校までは、積極的に守備をするタイプではありませんでした。でも、明治に入ったらそうはいきません。実際、守備が一番苦労しました。先輩たちの寄せ方などをみながら、学んでいきました。あとは、栗田監督をはじめ、スタッフの方々から「草太、(相手との)距離! 寄せろ!!」と檄をいただきながら(笑)。
また、『明治大学体育会サッカー部は「プロの養成所」ではなく「人間形成」の場である』というスローガンの通り、人間性もすごく成長させていただきました。挨拶、立ち居振る舞い、本質を見抜く力、考える力が身に付きました。
チームのために、さまざまな仕事をして、トライ&エラーを繰り返しながら学ぶ1~2年生時、指導する側に回って、どうすれば上手く伝えられるか学ぶ3~4年生時。動く側、指導する側、両方で必要なことを生活で学びました。
すがや:厳しさがあるからこそ、人間性も高められる素晴らしい環境ですね。明治大学体育会サッカー部は、入部するのも大変な場所だとは思いますが、明治へ進学を考えている、サッカーをやろうと思っている高校生に、魅力を語ってもらってもいいですか。
中村:全員が『どんな立場でも全力』っていうところが一番の魅力かなと感じています。誰ひとり手を抜かず、毎日全力でトライしている、追求している。それに対して、あざ笑ったりする選手もいないです。そういう組織の一員でいられることは誇らしいですね。
試合になかなか絡めず応援席にいる選手も「来週は俺が出る!」って強い思いを感じますし、試合に出ている選手はそれを肌で感じるから、「気を抜いたら、すぐに試合に出られなくなる」というのを分かっているんです。そして、そういう悔しい思いを抱えているチームの代表だからこそ、恥ずかしいプレーはできない、とグラウンドに立っています。
時には厳しい場面もあるけれど、サッカーはもちろん、ひとりの人間として、大切なことを学べる場所だと思っています。
すがや:大変な分、乗り越えた時、大きな財産になりますよね。最後に、これからの大学サッカー界について、聞かせてください。僕は、大学サッカーが、レベルの高さと注目度がかなり乖離しているなっていう印象で。なんでこんなにレベルが高いのに、こんなに注目されてないんだろう? 選手としてプレーしている中村選手は、なにか感じるものはありますか?
中村:戦っている身からしても、これだけレベルが高いのに、注目度は高くないのかな、と思ってしまうこともあります。ただ、最近だと、筑波大学出身の三笘薫選手が大学時代のことをお話されることもあり、少しずつ注目されているのかなと感じます。日本代表の選手から、“大学サッカーっていいんだよ”って発信してもらえると、認知度も高まっていくと思います。
あとは、高校時代のチームメイトの稲村隼翔という東洋大学の選手が、アルビレックス新潟さんの特別指定選手で、すでにJリーグデビューしています。大学の寄付金募集サイトで、サポーターの方からたくさんの寄付があったことでも話題になりましたよね。すでにJリーグで戦っている選手が見られるのも、大学サッカーならではかなと。そういったところからもっともっと広がっていったらいいなって思います。
すがや:大学サッカー界のことを考えているのも、明治で育んだ人間性や、4年間を通して学んだことの賜物だなって感じます。これから始まるインカレとその先でのプロでのご活躍、期待しています! ありがとうございました。