「億」稼ぐ人が泥だらけになっている

プロ野球のスター選手にもなると、1億円以上の年俸をもらっている人も少なくない。ベテランになると多少マイペースな練習が許されているが、基本的にはいくら稼いでいるとか関係なしに、みんな必死に練習している。ユニフォームが泥だらけになることも多いが、冷静に考えて「億」稼ぐ人が泥だらけになっている姿を見られるのは、他の業界を見渡してもかなり貴重なのではないだろうか。僕の何倍もの年俸の選手が泥だらけになっている姿を、客席からぼーっと眺めていると「自分も何かやらなきゃ」という気持ちになる。ムダに服を汚して帰ろかなと思う。

シーズンが始まってからの華々しいプレーの数々は、このような努力の賜物であるし、やっぱり「億」稼ぐというのはそれだけ大変なことなんだなと改めて気付かされる。

改めて僕が言うまでもないが、プロ野球の世界は弱肉強食の完全実力社会だ。結果を出した選手が評価され、結果を出さなかった選手は容赦なくクビを切られる。

そんなサバイバルを最も間近で見られるのがキャンプだ。今年僕が行った日は、チームメイト同士が戦うほぼ全員参加の「紅白戦」が行われた。ここで結果を出すと次のステップである「オープン戦(練習試合)」に出場でき、さらに結果を出せばシーズンでも一軍の試合に出場できるようになるという、相当し烈なサバイバルだ。

一部の一軍選手はこの争いを免除されて自分のペースで調整を許されているが、大半の選手はここで結果を出さないと試合に出られないので必死だ。なのでチーム同士とはいえ本気の戦いを見ることができる。紅白戦は結果を出した選手とほぼ同じ数だけ結果を出せなかった選手がいる、誰かが打ったということは、誰かが打たれたということなのだ。悲喜こもごもの人生模様は、純度100%の人間ドキュメンタリーだ。

「とにかく基本が大事」

僕がキャンプで最も楽しみにしているのが、「守備が上手な選手の守備練習」だ。おそらく多くの人は、届くか届かないかギリギリの球を派手に横っ飛びして捕るなど「難しい球をなんとかして捕る練習」を想像すると思う。僕もキャンプに行くまでそう思っていた。

実際はその逆で(もちろん時に横っ飛びもするが)、自分の体の真正面に飛んできた超簡単な球を「確実に」捕る練習をとにかく繰り返すのだ。それも10球20球どころの話ではなく、平気で100球200球と積み重ねていく。「あなた上手なんだからそんな簡単な球を捕る練習しなくていいでしょ」と言いたくなるが、とにかく基本の「型」を体に染み込ませる作業を繰り返すのだ。素人目には同じように捕ったように見えても、「全然ダメ」と言ったりして、本当に細部までこだわって練習している。

ただひたすらに、もう無意識でもできるくらいまで繰り返す。基本的なことが100%できてこそ、応用ができるようになる。練習でできないことは、本番でできるわけがない。ましてプロ野球選手は何万人もの観客の前でプレーをするので、そのプレッシャーたるや半端ないだろう。その中でも動じずにプレーするためには、キャンプを始め、日々の努力しかないんだなぁ。

派手なことより、地味で退屈な鍛錬のほうが大切。これはビジネスにおいて、ひいては人生においてもとても大事なことだと思う。基本があっての応用。派手なことをやってのける人もすごいが、地味なことをミスしないで確実にできる人も、かなりプロフェッショナルだと思う。

また、守備が上手なベテラン選手の練習パートナーに、駆け出しの若手が抜擢される光景をしばしば目にする。若手選手は近くでベテランの技術を盗むために必死で動きを観察して、アドバイスを求めて、とにかく吸収しようとする。そんな「伝承」の光景もまた見ていて飽きない。

我が日本ハムだと、若手の水野選手がベテランの中島選手とペアで守備練習をしていたりする、胸アツだ。しかもノックを打っているのが谷内コーチだというのもかなりアツい光景なのだが、そのストーリーは野球ファンすぎるので割愛する。

▲普通に沖縄料理も食べます、サイコー

今年のキャンプは終わってしまったので、気になる人は来年ぜひ行ってみてほしい。

日本ハムは昨シーズン2位と大躍進を果たした。今年こそは優勝!?まぁしてもしなくてもずっとファンだし、来年のキャンプにも絶対行くし。日本ハムファイターズに関わる仕事をすることは、僕の夢でもあるので、僕は僕で基本を大切にして、泥だらけになるまで仕事に励んでいきたい。

▲また来年!

次回の『TP社長日記』は、2025年3月13日(木)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
高橋 雄作(たかはし・ゆうさく)
株式会社TPコーポレーション東京X代表取締役。高橋プロデューサー略して「TP」と呼ばれている。東京都出身。1987年9月27日生。早稲田大学政治経済学部卒。テレビ朝日に新卒で入社し「Qさま!!」「お願いランキング!」「もういっちょシリーズ(金属バット・蛙亭・ランジャタイほか)」などを担当、PやDを務める。2022年8月に独立し会社設立。「金属バット無問題(YouTube)」「板橋ハウスのラジオディア(stand.fm)」など様々なコンテンツを手掛ける他、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフP、ライブ配信サービス「SHOWROOM」コンテンツDも務める。また「新横浜ラーメン博物館」にあるラーメン店「浅草来々軒」のオーナーも務めている。お笑いと北海道日本ハムファイターズとフライドポテトと柿の種が大好き。Twitter:@takahashigohan、オフィシャルサイト:株式会社TPコーポレーション東京X