国家の命運を外国に委ねるな! 独立国としての「フリーダム(freedom)」を、外国と官僚に依存した戦後体制によって奪われている日本。国際情勢や国内の諸問題を通じて、真の「フリーダム(freedom)」とは何か? 『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)で第1回日本再興大賞を受賞、第20回正論新風賞を受賞した江崎道朗氏が日本再建の道はどこにあるのかを示す!

敵だらけのトランプ政権に味方する安倍首相

北朝鮮の核開発はどうなるのか。アメリカのトランプ政権は北朝鮮をどうするつもりなのか。

北朝鮮に攻撃を仕掛けるかどうかを決断するのはトランプ大統領ですが、そのための判断材料を集め、準備をするのは国防総省、通称ペンタゴンです。その本部は首都ワシントンにあります。

ここまではよく知られた話なのですが、実はアジア太平洋地域の防衛を所管しているのは、ハワイに司令部を置く太平洋軍司令部なのです。この司令部が在日米軍、在韓米軍、第7艦隊を所管し、北朝鮮攻撃の準備を担当しているのです。言い換えれば、国防総省の話だけを聞いているだけでは、米軍がどのように考えているのか、本当のところはよく分からない部分があるのです。

ここから先の話は、トランプ政権の考えというよりも、アジア太平洋の防衛を担当するアメリカ太平洋軍の関係者の意見だと思って理解していただければと思います。

《われわれは現在、二つの大きな脅威に直面している。短期的には北朝鮮。長期的には中国が自国の利益を確保するために軍事力を使おうとしていることだ》

日本では、北朝鮮の核とミサイルばかりが話題になっていますが、北朝鮮よりも脅威である中国のことを忘れてはいけない、というのです。

《北朝鮮の脅威は軍事だけといえる。経済力がないため、中国に比べればそれほど難しくない。中国は経済力をもっているため、中国に対して軍事は重要だが、それ以上に外交、情報、経済などの分野で中国を抑止していくことが重要だ。特に中国は、他国が他の問題に気をとられている間にいろいろと手を打ってくるので注意が必要だ》。

ペンタゴン(国防総省庁舎)

実は日本では報道されていませんが、中国は既に数百発のミサイルを日本列島に向け発射できるよう準備を済ませており、そのミサイルに核爆弾も搭載可能なのです。

この中国と北朝鮮とは軍事同盟を結んでいて、北朝鮮が攻撃されたら中国はその国と戦争をすることになっているのです。よってトランプ政権としては、おいそれと北朝鮮を攻撃できない。仮に北朝鮮の核施設などを攻撃するとしても、中国などと予め話し合いをしておかなければならないということです。

トランプ政権にとって最大の脅威だと考えているのが中国です。その中国の軍事的経済的台頭を抑えるため、当初はロシアと組もうとしました。ですが、ロシアとの関係改善は進まず、次善の策としてASEAN諸国やインドと組んで中国を牽制しようとしているのです。

中国側は2014年11月、一帯一路構想といって中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」〔「一帯」の意味〕と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」〔「一路」の意味〕の二つの地域で、インフラ整備、貿易促進計画を提唱し、アジア諸国に対して徹底的な経済支援を実施しています。この「買収」工作のため、ASEAN諸国の多くが「中国批判」を口にしないようになってきているのです。

ASEAN本部(ジャカルタ)

それでなくともASEAN諸国は、アメリカのヘッジファンドといった金融会社によって会社を次々に買収されるなど、アメリカにあまりよいイメージを持っていません。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は反米で有名ですし、ベトナムはベトナム戦争の記憶があり、親米ではありません。

インドも独立以来、非同盟といってアメリカともソ連とも同盟を結ばずに独自の道を歩んできたため、さほどアメリカとは関係がいいわけでもありません。

しかもトランプ共和党政権は、どちらかというと中国に好意的なアメリカ国務省幹部とは仲が悪く、外交は余り機能していないのです。

途方に暮れたトランプ政権に救いの手を差し伸べたのが、安倍首相なのです。

※本記事は、江崎道朗:著『フリーダム 国家の命運を外国に委ねるな』(展転社:刊)より一部を抜粋編集したものです。

『国家の命運を外国に委ねるな!』は次回6/9(火)更新予定です、お楽しみに。