国家の命運を外国に委ねるな! 独立国としての「フリーダム(freedom)」を、外国と官僚に依存した戦後体制によって奪われている日本。国際情勢や国内の諸問題を通じて、真の「フリーダム(freedom)」とは何か? 『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)で第1回日本再興大賞を受賞、第20回正論新風賞を受賞した江崎道朗氏が日本再建の道はどこにあるのかを示す!
激高するアメリカ世論
2017年6月19日、北朝鮮に拘束されていたアメリカのバージニア大学の学生、オットー・ワームビアさん(22)が亡くなりました。この青年の死がアジア情勢を大きく変えることになりました。
北朝鮮当局によれば、ワームビアさんは2016年1月、北朝鮮旅行の帰国直前、ホテルから展示物を盗み、持ち帰ろうとしたとして拘束され、同年3月、『国家転覆陰謀罪』で労働教化15年の判決を受けた後に、ボツリヌス菌に感染し、睡眠薬を服用したところ、昏睡状態に陥ったということです。
北朝鮮による不当な逮捕に対して何とかしてほしいと、ワームビアさんの父親のフレッド氏は、オバマ民主党政権に何度も要請しましたが、何も動きませんでした。
ところが2017年になってFOXテレビが番組で取り上げたところ、共和党のトランプ大統領がそのことを知って、北朝鮮に圧力をかけ、ワームビアさんは6月13日、昏睡状態で解放されて、14日、空路帰国しました。
ワームビアさんが昏睡状態で帰国した様子はテレビで報じられ、翌15日、父親は「北朝鮮の説明は信じられない。息子をこのように扱うなど弁解の余地はない」と述べ、北朝鮮を激しく非難しました。更にトランプ共和党政権に対しては「感謝する」と述べる一方、オバマ前民主党政権は事を荒立てないよう求めるばかりで「何の成果も上げなかった」と批判しました。
オバマ民主党政権は、人権問題に熱心であるかのように報じられてきましたが、実際は、人権に冷たかったわけです。その一方で、「不法移民」問題などで、人権問題に冷たいと非難されてきたトランプ大統領は、懸命に北朝鮮に拘束された自国の青年を救出しようとしたのです。
2017年春からの北朝鮮の核開発問題について、アメリカの世論はさほど関心はありませんでした。アメリカはヨーロッパからの移民で成り立ったこともあり、母国のヨーロッパと中東の動向の方が関心が高いのです。
ところがこのワームビアさんの事件で、北朝鮮に対するアメリカ世論の関心は一気に高まりました。おかげでトランプ政権は、野党民主党からも支持を得て北朝鮮に対応できるようになってきているのです。
平成29(2017)年の春、北朝鮮の核開発と弾道弾ミサイルの問題に関連して「原子力空母カールビンソンが北上してきた」「アメリカは北朝鮮に大規模軍事攻撃をかけるのではないか」、あるいは「『斬首作戦』で金正恩暗殺のための部隊を送り込む」といった話がテレビでも盛んに報じられました。
ところがアメリカは、軍事行動に踏み切りませんでした。
北朝鮮で有事となった場合に考えられる中国、韓国のリスク、脆弱な日本の防衛力の問題に加え、オバマ民主党政権の時代、的確な攻撃に必要な情報収集の担当者を次々にクビにし、予算を削って、北朝鮮に関する情報収集体制がボロボロにされていたという理由がありました。軍事行動をしなかったのではなく、軍事行動に踏み切れなかったというのが実情です。
そこでトランプ政権はやむなく時間稼ぎもかねて、北朝鮮の内情に詳しい中国の習近平政権に対して「中国から北朝鮮に圧力をかける」よう要望したのです。
同時にアメリカ独自の情報収集、攻撃態勢も整えようとしていて2017年3月、トランプ政権は軍事予算を日本円で68兆円に増やすよう連邦議会に提案しました。
更にCIAのマイク・ポンペオ長官(当時)によると、北朝鮮の核・ミサイル開発の進捗状況などの情報収集を専門に担当する「朝鮮ミッションセンター」(Korea Mission Center)を5月10日に発足させていますし、在韓米軍も金正恩の情報を担当するインテリジェンスの部隊を再建したようです。
※本記事は、江崎道朗:著『フリーダム 国家の命運を外国に委ねるな』(展転社刊)より、一部を抜粋編集したものです。