国家の命運を外国に委ねるな! 独立国としての「フリーダム(freedom)」を、外国と官僚に依存した戦後体制によって奪われている日本。国際情勢や国内の諸問題を通じて、真の「フリーダム(freedom)」とは何か? 『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)で第1回日本再興大賞を受賞、第20回正論新風賞を受賞した江崎道朗氏が日本再建の道はどこにあるのかを示す!

問題は日本の防衛費不足

安倍首相は平成24(2012)年12月、英文の論文「アジアの民主的セキュリティ・ダイアモンド構想」を発表しています。日米同盟を広げて東南アジアやオーストラリア、更にはインドに至るまでの連携網を構築しようという構想です。

平成29年9月14日インドのモディ首相の歓迎を受ける安倍夫妻 [出典:首相官邸HP]

これまでどことも同盟関係を結んでこなかったインドも、2017年9月に訪印した安倍首相を実に8キロにわたる歓迎パレードで歓迎し、いまや日本とインドは同盟関係を結ぼうとするほど、良好な関係を築いています。

もし安倍首相の「セキュリティ・ダイアモンド構想がなかったら、南シナ海でも東シナ海でも中国の横暴はもっと酷くなっていて、軍事紛争が起こっていたかもしれない」というのが米軍の元幹部たちの認識でした。

インド太平洋地域の安定と平和を守るために現在のような戦略的な安倍外交がなくてはならない、安倍外交こそがインド太平洋諸国とアメリカとを結びつけてくれている要だと、米軍関係者は認識しているわけです。

国連総会に続いて実施された日米韓3カ国の協議中に、トランプ大統領は安倍首相の誕生日を祝福するサプライズをしました。アメリカ大統領が公の席上で、日本の総理大臣のお祝いをしたのは恐らく初めてのことです。このトランプ大統領の行動はツイッターで全世界に広がり、「なぜそれほど安倍首相はトランプ氏から大事にされるのか」と話題になりました。

首相官邸Facebookのトップ画像

残念ながら課題もあります。日本の防衛体制の不備、特に防衛費の不足です。

2017年10月6日付『アジア・タイムズ(Asia Times)』に載った「日米関係 :その結びつきの強さは?」と題するその原稿は、北朝鮮危機と連動するであろう中国の危機について、こう警鐘を鳴らしています(邦訳は©海外ニュース翻訳情報局)。

《米国政府は日本の期待していることを明確に認識する必要がある。北朝鮮が東京にミサイル攻撃を行えば、米国は必ず激しい対応を行う。中国の侵略部隊が九州に上陸したら?同じことだ。しかし、北朝鮮のミサイルが50マイルの沖合に落下した場合や、日本の田舎の住民のいない場所に落ちた場合はどうだろうか?あるいは、中国の漁民が尖閣に上陸して退去を拒否し、中国海軍がすぐ近くで日本に干渉するなと警告していたら?このようなぎりぎりの問題でも、日本は米国に武力の行使を含めて徹底的な支援を期待している》

ニューシャム氏は「北朝鮮がアメリカによる反撃を受けない範囲で対日ミサイル攻撃を仕掛けてくる」と考えているのです。確かにこの場合、トランプ政権はどうするのでしょうか。

また北朝鮮有事に連動して、尖閣諸島に国籍不明の漁民たちが上陸してきたら、そのとき近くにいる中国の軍艦が、日本に「干渉するな」と警告してきたとき、日本は、アメリカはどうするのでしょうか。こうした微妙な問題について、日米首脳はしっかりと詰めておかないと、北朝鮮や中国にしてやられるぞと警告しているのです。

それでなくともアメリカの政治家の大半は、極東の「島」、つまり尖閣諸島のために米中が戦争をすることなどあり得ないと考えていると言われています。日本の領土なのだから、米軍などに頼らず、日本がしっかりと守るべきだということです。

防衛にはお金がかかります。トランプ政権は北朝鮮有事を念頭に、前年比で約7兆円増の68兆円に増やす防衛予算を国会に提出、かろうじて可決されました。福祉や失業者対策の予算を増やしたいのですが、アジアの平和を守るために歯を食いしばって防衛予算を増やしたのです。

ところが日本の平成28(2016)年防衛費は数千億円増やしただけで、その総額は僅か5兆数千億円に過ぎません。このため日本は本気で防衛をするつもりなのかと米軍は不信感を募らせています。

憲法改正も重要ですが、防衛費増額をしないと日米同盟の信頼関係を確保できない、つまり北朝鮮、そして中国の脅威に立ち向かえないのです。

※本記事は、江崎道朗:著『フリーダム 国家の命運を外国に委ねるな』(展転社:刊)より一部を抜粋編集したものです。