アトリエへの憧れ

高野:アクリル絵の具のスターターセットみたいなものを使ってますね。最近、メタリックがかったような、色が変わる絵の具を買ってみたりしました。僕は結構デジタルで描くことのほうが多いんですが、こういうアトリエのような場所、かっこいいですよね。アトリエ欲しいなって憧れます。
大河:でも、私もアトリエを持ってまだ2年目くらいです。それこそ、私も何年かデジタル作家だったので。
高野:そうだったんですか。
大河:そうなんです。デジタル畑からスタートで、デジタルは場所とか関係ないので、家で描いていたんですけど、だんだんやりたい表現が増えてきて、絵の具を使いたいな、キャンバスにするか…となったら、家では描けないってなってきて、アトリエを借りるか! みたいな流れです。
今もデジタル作品を描くこともありますが、個展や自分の作品づくりはキャンバスでやりたいというか、挑戦的なことをアトリエでやっている感じです。やっぱり、絵の具が散る工程が結構あるので、壁とかに養生をして、汚さないようにしたり、空気清浄機とか置いたり、家だと難しいですからね。
高野:この絵も下地の段階ですね。
大河:そうです、下地を何層か塗っていくので、今塗ってある色はほとんど消えていくと思います。
高野:最終的に何色になるかは?
大河:まだ悩み中です。でも、いろんな色を塗り重ねて行くと、意外とフラットにならないというか、ちゃんと味が残ってくれるところがあったりして、飾ってある完成した作品をよく見ると下に塗ってある色がうっすら見えたりしています。ニュアンスがでますよね。
高野:下のピンクをわざと見せてるところ、効いてます。
大河:結構新しいシリーズはグラデーションをピキピキっとかっこよく背景にしたいなって感じだったので、キレイめなグラデーションにしたりしています。手前に描いているのものがバーンって目立ってくれるといいなと思って。背景はちょっとカッチリさせるか、みたいな。対比というか見え方の面白さが出てくれたらいいなと思ってやってます。
高野:走馬灯の作品とかそうですよね。
大河:そうです、ありがとうございます。あの作品はデジタルでも描きましたね。
走馬灯 pic.twitter.com/j62coFtAAc
— 大河紀 nori okawa (@nori_okawa) May 10, 2025
高野:デジタルで描いたものがキャンバスでも具現化できるっていうことなんですね。
大河:私はデジタル出発だったので、絵の具は最初苦労しました。描いてると上手くなってきたなと実感します。
高野:最近は、アナログっぽい質感もデジタルで描けちゃいますよね。油絵っぽい質感とか、水彩っぽい質感とか。ソフトは何を使われてるんですか?
大河:プロクリエイトで描いています。Apple Pencilが本当に革命だったので、iPadとApple Pencilを手に入れてから描き始めました。作家業が今6年目くらいなんですが、一度社会人を経験してるんです。
大学は多摩美術大学のグラフィックデザイン学科を卒業したんですが、卒業してから5年間、ガッツリ社会人をやっていました。映像制作の会社で結構忙しい仕事だったんですけど、5年経った頃にまたもう1回絵を描いてみようかなと思って、デジタルからスタートして、今に至ります。

――会社はどのタイミングで辞められたんですか?
なんやかんやで7年くらい会社にいました。でも最後の2年は、コロナ禍で、色々仕事の流れも変わっていくタイミングで、本当にそこがスタートになりましたね。
高野:そうだったんですね。大阪・関西万博の仕事もされてましたよね。
大河:そうなんです。制作期間は短かったのですが、チームの皆さんがこういう状況に慣れていて、頼もしかったです(笑)。そして意外となんとかなっちゃうもので、凄く楽しかったです。
次回の『お訪ねアトリエ』は、2025年9月19日(金)更新予定です。お楽しみに!!


有機質と無機質を組み合わせたモチーフで、自身が表現を志したきっかけとなった、生と死を描き、その探求を通じて人間が持つ可能性や美しさを見つめ直す。国内外で精力的に作品を発表する一方で、Miu Miuや大阪万博など多分野とのコラボレーションでアートワークを手がけ、作品の根底にある問いを領域を越えて可視化している。 X:@nori_okawa Instagram:@nori_okawa