後ろから声をかけてきた人物は……

そこから数年経ち、少しずつテレビに出れるようになったある時、知り合いの誕生日会があり、久しぶりに港区の夜に足を踏み入れる事になった。

広いバーを貸し切って誕生日パーティーで大人数人がいた。

心の中の田舎をなだめながら余裕なフリをして知り合いを探していると、
「あ? すみませーん! すがちゃんですよね?」
と後ろから声をかけられる。

振り向くととんでもなく露出をした女子3人組だ。

「私すごいファンなんですよー」

なんか見覚えがあるなと顔をよく見ると、
あっ!! あの時の港区を煮詰めた女子だ。
思い出した瞬間嫌な思い出がフラッシュバックする。

「あの、昔会った事ありますよね?」
眉間に寄るシワを必死に伸ばしながら聞くと、

「初めましてですよ! 会ったら絶対に覚えてますもん」

こいつオレがあの時の若手芸人ていうのに気づいてない。
いや、普段から自分が下だと思った人間には全員あの態度だから覚えてないのか。

「もしよかったら写真撮ってくださいよー」

自分が嫌な事をした相手とはつゆ知らず写真をお願いするなんて、気づいたら恥ずかしくて立っていられないだろう。

ただオレはここで写真を快諾した。
「良いですよ! 撮りましょう。んじゃインカメラでオレ撮りますよ! はい可愛子ちゃん」

「えぇーかわい子ちゃんだっておもしろーい」
爆笑する港区女子。

「んじゃ良い夜を」
とその場を颯爽と去る。

オレはそこで港区女子に仕返しをしなかった。
そこで恥をかかすことも出来た。

あの時された事を1から説明することも出来たけどしなかった。

なぜならそんなのはカッコよくないから。逆に笑かしてやった。だってそれが芸人だろう。

最初に言った通りオレはカッコいい。
そうでしょ?
また一つオレのかっこいい伝説が増えた。

オレの事をカッコいいと思わなかったみんな。
声に出して「すがちゃんカッコいい」と言ってくれ。

それで清算した事にするからさ。

次回、反省第11回「及川光博を追いかけて」は12月20日(土)更新予定です。お楽しみに!!