現代の女性を描く

高野:でも、やっぱり絵に統一感もありますし、面白いです。描く人物は、自分が好きな女性像が反映されていたりしますか?

鈴木:そうですね、結構彫りの深い、目がぱっちりしている女性が好きで。

――あと、全員、元気そうですよね(笑)。

鈴木:はい(笑)。体調的にも精神的にも。

高野:はははは(笑)。でも、江戸時代の浮世絵の女性は、目ぱっちりしてないですよね。

鈴木:そうですね、結構あの時代は細い目で切れ長の女性が美しいっていうイメージだと思うんですよ。今の時代は、ぱっちりの人が多いですよね。

――セイゴさんの作品は、今の時代を反映する浮世絵ですね。

高野:確かに。浮世絵の感じと現代がマッチしていてすごいいいですよね。バランスですよね。

▲画集『うっつく ‐ 日ノ本美人寄 -』より

鈴木:浮世絵風の絵を描く前は、まだ自分の絵のスタイルが確立できてなくて、いろいろ試行錯誤した結果、浮世絵風にたどり着いたって感じなんです。それまではXのフォロワーさんとかも少なかったんですけど、浮世絵風イラストを描き始めて、皆さんに見ていただけるようになって。それから浮世絵風でこれからいってみようと思って描いています。

――絵に特徴を持たせるとか、個性を出すって大変ですよね。

鈴木:はい。そればっかり突き詰めてやっていました。自分の絵柄を描けるようになりたいと思って。

――絵を描き始めたタイミングって、小さい頃から描かれていたんですか?

鈴木:そうですね、たぶん2、3才とかから描いていたと思います。

高野:ええ!?

鈴木:僕的には、言葉のコミュニケーションよりも、絵で自分を表現する方が得意なんだと思います。

高野:なるほど。

高野:絵のために建築の学校に行かれたんですか?

鈴木:それは、たまたまですね。漠然と“いつか絵描きになりたい”くらいにしか思ってなくて、将来こうなりたいとか、この仕事したいとか、こだわりとかもなくて。ただ、いつか絵の仕事をやりたいと思って、そのいつか絵の仕事できるために、とりあえず絵を描いておこうみたいな感じで。たまたま建築科に入って、パースを習ったので、取り入れてみようみたいな。最終的にここに今たどり着いているって感じですね。

高野:すごいなー。

鈴木:結構手当たり次第に取り込んでいって、それを自分のものにして出力するのが楽しいので、そうやってる感じです。

高野:今、二足のわらじ的に別のお仕事もされているんですね。

鈴木:そうです、絵だけで生計を立てるのは結構難しいと思います。例えば、イラスト一本でやって、今月これだけの絵を売って収入がなかったら生活できなくなるというストレスやプレッシャーに耐えられないので、いったん別に絵の収入がなくても生活できる分の収入を得るために仕事をして、その方が気持ちの余裕的にも、絵が売れる、売れないに関係なく、ただ単純に描きたい絵を描けるという気持ちが楽で絵を楽しめるので、そっちの方が自分に合ってると思います。

高野:いいですね。

――絵を描く時は、仕事とどういうバランスで描かれているのですか?

鈴木:今の会社の社長に相談して、今は午前中だけ仕事をして、午後は絵を描く時間にしています。

――いいバランスですね。

高野:そして、絵を描くのが早いからこそできるのかもしれないですよね。

鈴木:そうですね。

高野:個展をやられて、画集もすごい点数の絵があって。まさか、他の仕事をやりながら描かれているなんて。

鈴木:それでも、この勤務時間にしてもらったのは今年からで、一昨年、去年は普通に5時まで働いていたので、結構忙しくて体調を崩しました(笑)。

――昔からいろいろ絵を描かれていて、画風が変化されていると思いますが、浮世絵スタイルになる前と比べると、今の作品の雰囲気はガラッと変わりましたか。

鈴木:変わりました。いつか絵で仕事ができたらいいなと思っていろいろ描いてましたが、人が描いている絵の真似をして描くので全然パッとしないし、SNSに載せても、もっと上手い絵の人たちが山ほどいるので、その中に埋もれてしまって、この浮世絵風のイラストを描き始めたら、いろんな人に見ていただけるようになりました。

高野:いろいろ描けるからこそ、あえて削っている部分がたくさんあるというのは、本当にすごいと思います。

鈴木:わりとシンプルなほうが刺さると思うんですよね。SNSをスワイプする中で、自分の作品を目に留めてもらうためには、一瞬目に入った瞬間にその人の心に突き刺さるようなものにしなくてはダメで、たぶんそれはすごくシンプルなものだと思うんですよね。

高野:絵じゃないですけど、SNSでは、文章は3行しか読まれないって聞きますし、たしかにそうかもしれませんね。

鈴木:上の欄にインパクトの強い面白い言葉を置くと目に留まりやすいみたいなんですよね。絵も同じで、なんだこの絵っていう違和感とか。だからそのシンプルさのインパクトみたいなので人の目に留まればいいなと思って描いてます。

高野:その違和感は僕も目が留まりました。体の動きと違う方向に髪の毛が流れているところとか。確かに、興味を引くきっかけになりますよね。着物や小道具もなんか生き生きと描かれてますよね。

鈴木:ありがとうございます。結構このあたりは左右が逆だよとか、刀の持ち手が逆とか突っ込まれることも多いですけど(笑)

高野:厳しいこと言いますね(笑)。

鈴木:絵のバランス見てこっちの方がかっこいいと思ったら、左手で刀持っているように描いてあるんで、実はそれはそんなにこだわりはなくて。かっこよさとかインパクト優先っていう感じです。

高野:刀の握り方が両手がっしりじゃなくて、片手は指を伸ばしているとか、こういうのがめちゃくちゃ好きでしたね。