時空を超えて感動を与える古代遺跡の魅力

人類の文明はまずメソポタミアで始まり、それがエジプトやそのほかの地に伝わっていった。そして、ペルシア、ギリシャ、ローマの文明へとつながっていった。ここでは、それに加え、年代的には新しいのだが、他地域の文明と隔絶していた中南米の文明を取り上げる。

エジプト文明はナイル川という母なる河川のおかげで安定した統一王国を維持できたし、征服者たちもその遺産に敬意を払ったので遺跡の保存状態もよい。

なかでも圧倒的な存在感を発揮しているのが、紀元前2560年ごろの古王国時代に建造されたギザのピラミッド群である。それより1000年以上のちの新王国時代のものでは、ルクソル周辺のハトシェプスト女王祭殿やアブシンベル神殿が白眉だ。

▲エジプトのピラミッド イメージ:PIXTA

メソポタミアの遺跡は保存状態がよくないが、代表としてはベルリンのペルガモン博物館に再現されているバビロンのイシュタル門(紀元前6世紀ごろ)をもって代表させておこう。そして、古代の世界をほぼ統一した最初の帝国は、アケメネス朝ペルシアだから、そのペルセポリスの遺跡(紀元前6世紀ごろ)を挙げる。

ギリシャの遺跡では、アテネにあるアクロポリスのパルテノン神殿(紀元前438年)が、美しさでも歴史的重要性でも圧倒的な存在であるといえる。ドリア式という質実な列柱のファサードは見事で、レリーフの質も高いが、第一級の部分は大英博物館にある。

ローマ人は建築技術にことさら長けていたので、現代においても実用性を保っているような建造物が多い。ローマ中心部にあるパンテオン(神殿)は、115~118年に建造された高さ43mのクーポラ(丸天井)がほぼ無傷で残っている。各地に闘技場がつくられたが、最大のものがローマのコロッセオで5万人を収容できた。

実用的な水道橋はローマ人の技術の高さの象徴だが、南仏プロヴァンス地方のポン・デュ・ガールの崇高さは格別だ。宮殿建築ではクロアチアにあるディオクレティアヌス宮殿の保存状態がよいし、都市遺跡としてはポンペイの遺跡に価値がある。

帝国各地の建築のなかで最も印象的なのは、『インディ・ジョーンズ』のロケ地としても知られるヨルダンのペトラ遺跡で、断崖絶壁に神殿や住宅が彫り込まれている。

▲ペトラ遺跡 イメージ:PIXTA

中米のマヤ文明や南米のインカ文明は、金属器の工具を使うことなく、精度の高い石造建築を建造した。マヤ文明の遺跡では9~13世紀ごろのチチェン・イッツァ(メキシコ)がその高度な技術も含めすぐれたものである。

インカ文明ではアンデス山脈の高地に築かれた謎の都市であるマチュピチュ遺跡(15世紀)が、世界遺産で最も人気のある遺跡のひとつになっている。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。