中世ヨーロッパで作られた大聖堂
キリスト教が公認されてから最初のころは、ローマのバジリカ様式などがそのまま使用されたが、やがてコンスタンティノープルを中心にビザンティン様式が発展した。西ヨーロッパでは、その後、ロマネスク様式、次いでゴシック様式が流行するようになり、とくにゴシック様式によるカテドラル(大聖堂)は中世の華というべきものだ。
ビザンティン(東ローマ)帝国では、ドーム型の屋根やモザイク画が特徴で、東洋的な要素も多く見られる。アヤ・ソフィアはユスティニアス1世により再建された大聖堂で大型のドームが特徴。緑色の柱は古代七不思議のひとつエフェソスのアルテミス神殿の資材を転用した。
西ローマ帝国の首都だったイタリアのラヴェンナには、多くのビザンティン様式の傑作がある。八角形のサン・ヴィターレ礼拝堂は、6世紀前半に建設され、ユスティニアヌス大帝らの人物群を描いたモザイク壁画が有名。
ドイツ・アーヘンのドームはこれを真似たか。サン・マルコ寺院はヴェネツィアのカテドラル。内部はモザイクで飾られている。正面2階のバルコニーに飾られた4頭の馬の銅像は、ネロの宮殿からコンスタンティノープルの競技場を経て、第4回十字軍がヴェネツィアにもたらした。
ロマネスク建築は西ヨーロッパで発展し、重厚な壁や小さな窓、半円アーチなどが特徴。ピサの大聖堂の鐘楼である斜塔(1063年)は、ガリレオ・ガリレイの実験でも知られる。
スペイン・ロマネスクではサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂。ゴシック様式では、ノートルダム大聖堂が最高峰だが、ここではあえて、シャルトル大聖堂(1194年着工)を挙げる。総数176個のステンドグラスが、アーケードと高窓にはめ込まれ「この世に存在する最も美しいもの」と称えられている。
ミラノのドゥオーモはミラノの象徴であり、世界最大級のゴシックが壮観。英仏海峡の砂州で陸地につながる岩の小島の上に、数百年にわたり増改築が繰り返され、さまざまな建築様式が併存するモン・サン=ミシェルの美しさは、世界遺産のなかでも人気のひとつ。ふわふわのスフレのようなオムレツやムール貝を楽しめる。
英国のゴシック建築にもカンタベリーやダラム大聖堂などすぐれたものが多いが、あえて、ここでは1834年のロンドン大火で消失して、ゴシック・リバイバル様式で再建された英国会議事堂であるウェストミンスター宮殿を挙げておく。
中世城塞では、12世紀に十字軍がシリアに築いたクラック・デ・シュヴァリエが、当時の築城技術の粋を極めたと評価される。エチオピアはコプト系のキリスト教国だが、12~13世紀に建造されたラリベラの岩の聖堂は、巨大な岩をくり抜いた奇観が人気。
※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。