東京都では6月19日から一部を除き休業要請は全面的に解除されました。しかし夜の繁華街での感染確認は相次いでいて、以前としてコロナが与える不安は大きいといえるでしょう。そしてさまざまな被害を減らすためには、ウイルスだけでなく「不安」や「差別」の感染も減らしていくことが必要だと、精神科医の藤野智哉医師は提言しています。
※本記事は、藤野智哉:著『コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
「不安」があなたの心の中を蝕んでいる
新型コロナウイルスが本当に恐ろしいのは、体や経済に与える影響だけではありません。これまでの報道でもわかるように、不安を与えて、人間の心に暗い影を落としていくことがわかっているからです。
たとえば、コロナ感染者への心ない中傷や、特定の国や地域を指しての心ない言葉、食料品や生活用品の買い占め、高額の転売、自粛を求める同調圧力、平時であればこうなりたくないという暗い闇が人々の心の中に根差していることを強く感じたことでしょう。
そう思っていたのは、あなただけではありません。なぜ、コロナの蔓延する(した)世界は生きづらいのか?
それは、コロナウイルスに侵されているのは、人間の体だけでなく、心だからです。コロナウイルスが私たちの心の中に撒き散らした最悪の害悪は「不安」だと言うこともできるのです。
さまざまな情報が溢れ、どう対応していいかわからず、不安になった日々だっと思います。そしてあなたは今でも不安を抱えていることでしょう。
コロナウイルスの報道に接し続けたことで、あなたが心の中に抱えていた小さな不安はやがて、モノを言わぬ爆弾となり、あなたの心の中を蝕んでいきます。
「不安だけど、どうしたらいいのかわからない」
皆さんが抱えている悩みはこれに集約される気がします。だからこそ、その恐ろしさの正体をきちんと知ることで、心の平安を取り戻すことだってできるのです。
3つの恐怖からなる感染症
あなたが抱えている不安はたくさんあるように思えるかもしれませんが、コロナウイルスの感染症は3つの恐怖でできていると、定義されるようになりました。日本赤十字が4月に発表した資料を元に解説していきましょう。
まず、ウイルスによって引き起こされる病気の感染。これを第1の感染と定義します。風邪のような症状や、重篤化して肺炎を引き起こすことがあります。
次に、不安の感染。これは人々に不安や恐れが伝染していくこと。最後に差別の感染。これはコロナに関する人々の心の中に、醜い気持ちが伝染していくことを指します。
この3つの感染は密接にリンクしていますが、直接的ではないからこそ怖いのが、第2、第3の感染です。