東欧と北欧のユニークな名曲たち

ドイツなどでのクラシック音楽の隆盛は、やがて東ヨーロッパや北ヨーロッパにもおよび、それぞれ民族性を反映したユニークな名曲を生むようになった。

ポーランド出身のフレデリック・ショパンは、フランス人とのハーフであり、やがてパリへ出て音楽活動の拠点とするようになった。ピアノの詩人といわれるように、この楽器の力強さと繊細さを、この人ほど引き出せた音楽家はいないだろう。

▲ショパン像 イメージ:PIXTA

作品は全曲見逃せないが『革命のエチュード』などを含む『練習曲集』『ピアノ・ソナタ第3番』『英雄ポロネーズ』『幻想即興曲』『ワルツ集』『夜想曲』とそれぞれ違う印象のものを挙げておく。『前奏曲』『バラード』『マズルカ』『協奏曲』などいずれもすばらしい。

ピアノでヴァイオリンのニコロ・パガニーニに匹敵するのが、ハンガリー出身のフランツ・リストで『ハンガリー狂詩曲第2番』など。激しく民族的なものもあるが『愛の夢』のような優美なもの。『ピアノ・ソナタ』『巡礼の年』など、より内省的な傑作も多いし『ピアノ協奏曲』や交響詩というジャンルを開いた『前奏曲』などもある。ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲など、多くの名曲をピアノ用に編曲もしている。

チェコの民族を代表する名曲が、ベドルジハ・スメタナの6部作の『わが祖国』で、とくに『モルダウ』は人気がある。アントニン・ドヴォルザークでは『第8番』と『第9番“新世界より”』は最も人気のある交響曲だ。『チェロ協奏曲』はこのジャンルで最高の傑作だ。

▲チェコの街並み イメージ:PIXTA

北欧にも民族派がいる。ノルウェーのエドヴァルド・グリーグは『ペールギュント』組曲やピアノ協奏曲で知られる。フィンランドの国民的英雄だったジャン・シベリウスは『交響曲第2番』『交響曲第5番』や、国民的な楽曲である『フィンランディア』そしてヴァイオリン協奏曲などがよく知られている。『フィンランディア』は上皇陛下のお気に入りという情報もあった。

ハンガリーのバルトーク・ベーラは、民謡を研究し独特の響きの音楽を書いた。『管弦楽のための協奏曲』が最高傑作だといわれている。英国のグスターヴ・ホルストは『惑星』という組曲を作曲したが、とくに『ジュピター』はポップス歌手が歌ったりして日本でもよく知られる。アメリカのジョージ・ガーシュウィンは『ラプソディ・イン・ブルー』でジャズとの融合を試みた。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。