バレエと融合したフランスの「グランド・オペラ」

フランスでは、ルイ14世の宮廷でジャン=バティスト・リュリ(17世紀後半)、ルイ15世の時代にはジャン=フィリップ・ラモー(18世紀前半)が活躍した。革命後には、バレエを含むグランド・オペラが隆盛し、ほかにオペラ・コミックも大いに人気を博した。

ヴェルサイユの宮廷でのオペラは、バレエや演劇と融合した総合芸術としての要素がより強かった。革命後には顧みられなかったのだが、近年、復権ぶりが著しく上演の機会が急速に増えている。とくにラモーは和声学の創始者という評価も出ている。リュリは『アティス』が代表作、ラモーは『ポレアド』『カストールとポリュックス』など。

18世紀中期からはイタリアの影響も強くなった。劣勢に立ったフランス・オペラに助太刀したのが、ドイツ人のクリストフ・ヴィリバルト・グルックで『オルフェオとエウリディーチェ』において、フランスとイタリアのオペラを融合し、歌手が技巧を見せびらかすことを排し、劇的な効果を高めるべきだという理論化を行い、近代オペラの祖といわれる。台詞が入ったオペラ・コミックも誕生した。

▲オペラ歌手 イメージ:PIXTA

革命期には、劇的な救出などをテーマにしたオペラが好まれ、それが発展して5幕からなり、かなりの時間をバレエに割くグランド・オペラが成立した。戴冠式行進曲で有名な『ユグノー教徒』(1836年)や『アフリカの女』などのジャコモ・マイアベーアがチャンピオンであった。エクトル・ベルリオーズでは、バスティーユ歌劇場のこけら落としでも上演された『トロイアの人々』(1858年)や『ベンヴェヌート・チェッリーニ』など。この系統のオペラとしては、カミーユ・サン=サーンスの『サムソンとデリラ』も著名だ。

▲パリ・オペラ座バスティーユ イメージ:PIXTA

一方、オペラ・コミックでは、ジョルジュ・ビゼーの『カルメン』(1875年)が最も知られるが、ドイツ生まれのジャック・オッフェンバックは『パリの生活』(1866年)など多くの作品で一世を風靡し、さらにオペラ作品として『ホフマン物語』(1880年未完)も書いた。

世紀末に、この二つの流れの中間的な領域で、叙情性の強いオペラが好まれるようになった。シャルル・グノーの『ファウスト』(1859年)は最も人気のある作品だが、アンブロワーズ・トマ『ミニョン』、ジュール・マスネ『マノン』、ギュスターヴ・シャルパンティエ『ルイーズ』、クロード・ドビュッシー『ペレアスとメリザンド』、モーリス・ラヴェル『子供と魔法』、フランシス・プーランク『カルメル派修道女の対話』など。戦後では、オリヴィエ・メシアンの超大作『アッシジの聖フランチェスコ』(1983年に小澤征爾〈おざわせいじ〉指揮で初演)が記念碑的な作品。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。