小池知事は功罪ともに大きかった

そんな中で、御厨氏が高く評価する小池百合子都知事はどうでしょうか。私は政府が大胆なコロナ対策を立てるにあたって、小池氏というジャンヌ・ダルクがいたことは良かったと思っていますし、その点は高く評価します。

緊急事態は日本医師会が3月30日に発動を求め、私も決断すべきと主張しましたが抵抗もあったので、小池知事が政府の背中を押したのは良かったです。さすがテレビキャスター出身だけあって、言語明瞭、要点にしぼっての発表能力は、ややまわりくどい印象があった安倍首相よりも説得力がありました。

ですが、医療現場の統率という場面では、東京都の対応は混乱を極めており、各種の数字も統一性のないものが多く、日本全体の状況をつかむうえで支障になったほどです。特に民間検査機関でのPCR検査では、陽性者だけが計上され、検査総数はわからないというのには困りましたし、そこで混乱したことにより、誤った分析がされる原因になりました。

このあたりは前知事の舛添要一氏のほうが、現場に乗り込んで専門的な説明も聞いて理解し、適切な専門家の助力も得ながら良い仕事ができたことでしょう。

広汎な休業要請をする一方で、財政調整基金という“へそくり”9000億円を使って、補償金を気前よく出し、コロナと戦うイメージを出すとともに、業者からも喜ばれて選挙対策にしたわけです。しかしバラマキのぎて、道府県追随できず全国的な混乱きました。この基金は首都直下地震などの時の備えとして大事なもの。なのに使ってしまったともいえ、いざという時にどうするつもりなのでしょうか。

▲小池百合子知事[出典:Wikipedia]

普通なら、国から「そんなに東京は余裕があるんなら、東京五輪の追加費用とか仰っても一銭も出しませんからね」といわれるから極端なことはしません。他府県より手厚い人気取り政策を大規模にする自治体が、別の案件で国の財政支援を頼んでも、それを受けるのは論理的ではないからです。

もちろん国の援助を受けるためには、独自政策はすべて止めるべきだということではありませんが、他の自治体より財源に余裕がある自治体でないと、できない政策をやっているのでは、他の自治体の住民に対して不公平になります。

しかし7月の都知事選挙を乗り越えることだけが頭にあるのか、小池氏は先のことは無視して突っ走りました。功罪ともに大きいと思います。