自分自身を思いやり、やさしくする
マインドフルネスに話を戻すと、先ほど説明したように「今この瞬間に意識を向け、気づく」「良い悪いと判断をせず、あるがまま受け入れる」というマインドフルネスの概念は、セルフ・コンパッションの概念である「思いやりや、やさしさ」でバランスをとっていかなければ実現しづらいのです。
なぜなら、私たちにはもともと備わっているネガティビティバイアスがあるので、どうしてもネガティブな方向にばかり目を奪われてしまう傾向があるからです。それを防ぐために、
- 意識的に良い面にも目を向ける
- 思いやりややさしさを向ける
- 自分にとって必要なことを考える
という、セルフ・コンパッションが必要となります。特にネガティブなものに目がいきやすいという方は、よりセルフ・コンパッションが必要になるのです。
マインドフルネスとセルフ・コンパッションは、合わせて実行することで相乗効果が生まれます。セルフ・コンパッションを実践する際、マインドフルネスな状態でないと、自分の感情や置かれている状況を客観的に捉えることができません。自分の感情に振り回されてしまうのです。
また相手の感情に引っ張られて、自分が疲弊してしまうということもあります。マインドフルネスによって、
- 自分は今、何に困っているのか
- 良い面も悪い面もバランスよく気づく
- どんなことを自分は考えているのか
- 評価や判断をせず、ありのまま受け入れる
ことが大切です。
客観的な視点でみることで自己中心的にならず、苦しみや困りごとを解決するために、自分にとって必要な行動を起こしたり、自分を労ったりと対処していくことができます。
マインドフルネスとセルフ・コンパッションを合わせて行うことで、お互い相乗効果があるというのはこのためです。
では、ここでGoogleの例を紹介しましょう。Googleで開発されたマインドフルネスのプログラム「SIY(Search Inside Yourself)」というものがあります。その実践者であるチャディー・メン・タンは、拡散するにふさわしいアイデアをテーマにして、5分から15分ほど質の高いプレゼンテーション(プレゼン)をおこなう「TEDTalks」のなかで、次のような話をしています。
「Googleは、毎日思いやりがあふれている会社だ。コンパッションは幸せをつくるが、Googleの根底にはコンパッションがあって、それが会社全体に広がっている。Googleでは、あらゆる施策がトップダウンではなくボトムアップで始まる。思いやりを中心におくことで、従業員がクリエイティブなアイデアを出したり、互いに刺激しあって高めあったりするメリットがある」
マインドフルネスだけではなく、この思いやりを中心に位置づけたチャディー・メン・タンのプレゼンは、大きな話題となりました。