バイデンは「第三期オバマ政権」を目指すのか?

次にバイデンの政策を取り上げよう。バイデンは上院議員や副大統領として、豊富な経験を有している。2期8年間にわたって副大統領を務めたバイデンが大統領に選ばれれば、オバマ第三期政権的な政策の展開が予想される。

まず民主党の候補者たちの間での最大の課題は、医療保険である。

バイデンは、オバマ政権時代に成立した医療保険制度、いわゆる「オバマケア」を引き継ぎ、この制度から落ちこぼれている人々を救済する新たな制度の創設を訴えている。所属企業の提供する医療保険を受けている労働者などは、既存の制度の保護をそのまま受けられる内容となる。

貿易政策では、恐らくオバマ時代の自由貿易政策と比べ、保護貿易寄りになるのではと思われる。自由貿易の結果として、中西部にあった多くの工場が中国など外国に移転した。その結果がブルーカラー層の失業であった。

この人々こそ、伝統的な民主党の支持基盤であった。この層の民主党への反乱が、2016年のトランプ当選を準備した。この層の支持を取り戻すためには、オバマ期のような自由貿易への復帰というわけにはいかない。

▲オバマ大統領の2009年演説 イメージ:Wikimedia Commons

環境やエネルギー問題はどうか。地球温暖化の問題では、トランプが離脱したパリ協定に戻るとしている。この面ではオバマ的である。しかし、実はエネルギー政策ではオバマ期の政策から離脱しようとしている。

バイデンは、シェール・ガスと石油の生産について、国有地での新たな掘削の停止を打ち出している。すでに見たように、シェール・エネルギーの採掘には、環境的には問題視されているフラッキングという技術が使われている。バイデンがそれを制限する方向で動くのであれば、中途半端ではあるがオバマ路線からの離脱を意味することになる。