イスラエルを支持するバイデンの中東政策
バイデンの外交政策はどうか。全体的に見ると、オバマ政権期への復帰の色彩が強い外交を提案している。まずトランプ政権による、NATOなどの同盟諸国をないがしろにする政策を批判し、同盟諸国との関係の再構築を訴えている。
次に中東政策を詳しく見ておきたい。大枠としては、アメリカが中東に介入して自らのイメージに合わせた民主国家を創ろうという、ブッシュ(息子)大統領の時代のような野心に批判的である。
バイデンは、アメリカに必要なのは中東での国家建設ではなく、この地域からのテロリストによるアメリカへの攻撃の阻止であると考える。そうであれば、必要なのは少数の対テロ戦争に特化した部隊である。少数の特殊部隊を中東に駐留させて、ドローン(無人機)などを使いつつテロ組織を攻撃しようという発想である。これも基本的にはオバマ期の政策である。そして、トランプも引き継いだ考え方である。
次に、アメリカと対立の高まっているイランとの関係をどうするのか。バイデンは既に見たように、オバマ政権のナンバー・ツーであった。当然ながら、オバマのイラン核合意を支持している。大統領に選ばれれば、合意への復帰を明言している。
イスラエルとパレスチナに対する政策はどうなるだろうか。
バイデンは、オバマ政権の一員として、イスラエルのパレスチナ占領地へのユダヤ人の入植政策に批判的であった。2009年の発足当時、オバマ政権はイスラエルに対して入植の凍結を求めた。だがイスラエルとアメリカ国内のイスラエル支持勢力の強い反発を受けて、この政策は腰砕けになってしまった。
そこでオバマはイスラエルに圧力をかけるのをあきらめ、代わりにイランとの核合意の成立に外交努力を集中させた。つまり凍結要求を凍結してしまったのだ。
もしオバマ政権の前例から判断すれば、バイデンはイスラエルに批判的ではあるが、事を構えて圧力をかけようとはしないだろう。事実、バイデンは議員時代から自身を「シオニスト」と呼ぶほど、イスラエルへの強い支持で知られてきた。バイデンの言葉を使えば「シオニストになるのにユダヤ人である必要はない」のである。
バイデンは、二国家解決案を支持している。そのために必要とあればイスラエルに圧力をかけるとは言明しているが、それテコにアメリカのイスラエルへの援助を使うというやり方に関しては否定的である。またエルサレムに移したアメリカ大使館を、テルアビブに戻すつもりはないようだ。