武漢にはウイルス研究のための実験室が2つあった
新型コロナウイルスが、中国のラボから漏洩したと疑われる根拠には次のようなものがあります。
1つは、新型コロナウイルスのゲノム配列を解析すると、その起源が「キクガシラコウモリ」由来のコロナウイルスであるという研究結果が、すでに出ていることです。
財新ネットは2月3日に、ウイルスの起源に関する報道で、武漢ウイルス研究所の副主任の石正麗のチームが、1月23日にBioRxivという論文素読用プラットフォームで「ある新型コロナウイルスの発現及びその起源が、蝙蝠である可能性について」という文章をあげたと報じています。
その文章によれば、新型コロナウイルスと雲南キクガシラコウモリの保有するRaTG13コロナウイルスの一致率は96%。早期の感染者5人から得られたウイルスのゲノム配列をみると、SARSコロナウイルス2及びSARSコロナウイルスとのゲノム配列の一致率は79.5%、蝙蝠のコロナウイルスとの一致率は96%だそうです。
中間宿主には、竹鼠やアナグマ、亀やヘビ、センザンコウという“候補”が挙がっていますが、もともとは蝙蝠由来なのです。
ですが、湖北省はキクガシラコウモリの生息地域ではありません。キクガシラコウモリは雲南省や浙江省に生息するらしいのです。ただ武漢にはウイルス研究のための実験室が少なくとも2つありました。
1つは中国科学院武漢国家生物安全実験室。これは、中国科学院武漢ウイルス研究所の管轄のBSL(バイオセイフティレベル4)という最も危険なウイルスを扱う実験室です。
ただ、この実験室は解放軍のための軍事目的研究が行われていると言われています。この実験室は華南海鮮市場とは30キロほどしか離れていません。
もう1つは、国家疾病予防コントロールセンター管轄の武漢疾病予防コントロールセンター実験室です。これは華南海鮮市場から300メートルほどのところにあります。
中国華南理工大学生物化学工程学院教授の蕭波涛と蕭磊が「リサーチゲート」サイトに発表した論文によれば、武漢疾病コントロールセンターの実験室の実験用動物には、湖北で捕えられた155匹の蝙蝠、浙江省で捕獲された450匹の蝙蝠がいました。
この蝙蝠が一人の研究員を攻撃して、蝙蝠の血液と研究員が直接接触する事故が発生したことがありました。この研究員はその後、14日間隔離されたそうです。
また蝙蝠の尿と研究員が直接接触する事故も起きたことがあり、このときも研究員は隔離されたそうです。
この論文では、新型コロナウイルス患者から分離したウイルスのゲノム配列と、蝙蝠コロナウイルスZC45の同源性は96%、あるいは89%と指摘しており、このウイルスはもともとキクガシラコウモリのなかで発現したものだそうです。
この蝙蝠は武漢に生息するものではなく、1000キロ以上離れた場所(雲南省や浙江省)に生息しています。ですが、武漢疾病コントロールセンターでは、このキクガシラコウモリを実験動物として保有していたと言います。
なので蕭波涛と蕭磊は、武漢で発生した新型コロナウイルスは、ヒューマンエラーによる実験室からのウイルス漏洩の可能性を疑っていました。武漢疾病コントロールセンターは、院内感染が初期に起きていた武漢協和医院とも近く、仮説として、蝙蝠の組織や餌の残りなどのゴミが周辺地区に漏洩して汚染されたことで、一群の感染者を出したのではないかと言います。
この論文は間もなく削除されて、今は閲覧できません。また、2人の教授とは連絡が取れない状態になっています。