診察室らしからぬ診察室で、いよいよ“亀仙人”こと亀廣聡医師と向きあった主人公・晴野ひなた。クリニックと病院の違い、精神科と心療内科の違い、そして働く人のうつ症状の「復職後再発率」の平均を知らされて驚きます。そんなひなたに亀廣医師は「安心して、うちのクリニックは違うから」と話し始めたのですが、さて……。

いやいや、精神科と心療内科も少し違うんだ

亀仙人 「これから、ひなたちゃんの病気について話していくけど、まず初診を問診票と15分程度の診察のあと、すぐ薬が出て終わるようなクリニックはやめたほうがいいと思うよ」

ひなた 「普通の病院はそんなものだと思いますけど」

亀仙人 「こころの病気は、そんな診察では分からないから」

ひなた 「そういうものでしょうか」

亀仙人 「そう、それにここは病院ではなくクリニックだからね。ひなたちゃん、病院とクリニックの違いって分かる?」

そして亀仙人は、病床数の違いで病院とクリニックとに分類されるんだ、ということを簡単に説明してくれました。(※1)

※1 クリニックや医院は診療所の通称。診療所と病院との違いは主に病床数で、病院は20床以上の病床数を備えている必要があるが、診療所は入院施設がなくてもOK。総合病院の場合は100床以上。他にも医師や専門スタッフの配置の定義に違いがある。

ひなた 「つまり、先生は小さな医院の経営者ってことですね」

亀仙人 「そう、その専門が心療内科ってこと」

ひなた 「いわゆる、精神科ってやつですね」

亀仙人 「いやいや、精神科と心療内科も少し違うんだ」

亀仙人の解説によると、精神科はこころの症状を扱う診療科で、不安や落ち込み、イライラといった気分症状や幻聴・幻覚、異常なこだわりや眠れないといった症状を扱うのに対して、心療内科は心理的・社会的な要因から引き起こされる、身体の症状を扱う内科ということのようです。

診察というよりは、雑談をしているかのように亀仙人は話を続けます。

(今思えば、この時にはもう診察は始まっていたのだと思います)

▲いやいや、精神科と心療内科も少し違うんだ イメージ:PIXTA

再発率0%には当然ながら理由がある

亀仙人 「それでは、ここで問題です。うつ病を治療して復職しても5年以内に再発してしまう人の割合って、全国平均で何%でしょう?」

ひなた 「う~ん、じゃ……、半分」

亀仙人 「正解!」(※2)

※2 2017年厚生労働省の調査によると、大企業の従業員のうつ病再発に伴う再休職率はリワーク後1年で28.3%、2年で37.7%。5年で47.1%。

ひなた 「そんなに高いんですか!?」

亀仙人 「でも、安心して。うちのクリニックの再発率は……」

ひなた 「はい」

亀仙人 「再発率は……」

ひなた 「はい」

亀仙人 「なんと、0%!」

ひなた 「0%!? ホントですか!」

亀仙人 「本当だよ、そんなウソつかないよ」

ひなた 「すごいじゃないですか!」

▲再発率0%には当然ながら理由がある イメージ:PIXTA

亀仙人は、自分では気づいていないと思いますが、得意げに鼻をふくらましています。そんな亀仙人を見ながら、ぼそりとつぶやいていました。

(このクリニック、普通とちがうけど、もうちょっと話を聞いてみたい)

亀仙人は鼻をふくらませたまま続けます。

亀仙人 「再発率0%には、当然ながら理由がある」

私は少し身を乗り出して食いつきます。だって、なんといっても全国平均が47.1%もある再発率です。それが0%をキープしているなんて、すごすぎます。

(いったいどんな治療法? 治療法でなければ特別な薬? それか、なんかよく分からないマシンを使うとか?)

グルグル回る考えをあざ笑うかのように、亀仙人は言いました。

亀仙人 「正しい診断をきっちりと下して、正しい治療を行うこと」

亀仙人は大きなデスクのイスから立ち上がると、右側に置かれているホワイトボードの前に移動しました。

いっぱい書かれている文字の半分くらいをササッと消すと、黒色のホワイトボードマーカーのキャップをポンとはずして「抑うつ状態(※3)」と書きました。

※3 「抑うつ状態」とは、日常的にはうつ状態と表現されることが多く、憂うつ・落ち込むといった気分が強く、かつ持続している状態のことを指します。

亀仙人 「ひなたちゃん。まず、心療内科を受診する人の抑うつ状態というものには、病的なものと、病的でないものがあるんだ」

亀仙人のホワイトボードを使ったレクチャーに、私は思わず身を乗り出します。


『「薬に頼らず、うつを治す方法」を、聞いてみた』は次回8/28(木)更新予定です、お楽しみに。

※本記事は、亀廣聡・夏川立也:著『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。